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参照用 記事

両モナドの基礎を固める

あわてて両モナドやメイヤー代数を復習する」において:

両モノイドは、モノイド A = (A, η, μ) と余モノイド B = (B, ε, δ) があって、さらに射 β:AB→BA が備わった体系 (A, B, β) で、βがη, μ, ε, δのそれぞれに対して「ベックの分配法則」になっているものです。



C = End(D) のとき、C内の両モノイドとしてD上の両モナドが定義できて、少し頑張って紐の計算をすると両クラスリ圏が構成できます。

モナドは、登山のベースキャンプのような役割として重要ですが、それ自体は構造が弱すぎて応用に直結はしないようです。

構造が弱すぎるにしても、より強い構造を定義する足場になるのは両モノイド/両モナドなので、これは重要です。ベースキャンプとしての両モナドの基礎を固める必要があります。

モナドモナド類似物なので、まずはモナドの性質をまとめておきましょう。

  1. C上のモナドFは、非対称モノイド圏End(C)内のモノイドである。
  2. クライスリ構成により、Fのクライスリ圏 Kl(C, F) を作れる。
  3. もとの圏Cは、Fのクライスリ圏 Kl(C, F) に埋め込める。
  4. “拡張”と呼ばれる、Fのクライスリ圏 Kl(C, F) からCへの関手がある。拡張の対象部分(object part)はFの対象部分と一致する。
  5. 埋め込みと拡張は随伴対となる。
  6. アイレンベルク/ムーア構成により、Fの代数の圏 Alg(C, F) を作れる。
  7. Fの代数の圏 Alg(C, F) からもとの圏Cへの忘却関手がある。
  8. 忘却関手の左随伴関手が存在し、この左随伴が自由代数を生成する関手となる。
  9. Fのクライスリ圏は、Fの自由代数の圏と圏同値となる。

モナドにも、以上の性質に対応する命題が存在して、それらが成立していることが期待できます。

  1. C上の両モナド (F, G, β) は、非対称モノイド圏End(C)内の両モノイドである。
  2. クライスリ構成により、(F, G, β) の両クライスリ圏 DiKl(C, (F, G, β)) を作れる。
  3. もとの圏Cは、(F, G, β) の両クライスリ圏 DiKl(C, (F, G, β)) に埋め込める。
  4. “拡張”と呼ばれる、(F, G, β) の両クライスリ圏 Kl(C, (F, G, β)) からCへの関手がある。拡張の対象部分(object part)はFGの対象部分と一致する。
  5. 埋め込みと拡張は随伴対となる。
  6. アイレンベルク/ムーア構成により、(F, G, β) の両代数の圏 DiAlg(C, (F, G, β)) を作れる。
  7. (F, G, β) の両代数の圏 DiAlg(C, (F, G, β)) からもとの圏Cへの忘却関手がある。
  8. 忘却関手の左随伴関手が存在し、この左随伴が自由両代数を生成する関手となる。
  9. (F, G, β) の両クライスリ圏は、Fの自由両代数の圏と圏同値となる。

もしホントにこれらの性質が成立するなら、両モナドモナドの正当な拡張概念だとみなしてもよいでしょう。

モナドの入れ替え操作βの可逆性を仮定すれば、いちおうの確認はとれたと思ってます。細部は端折ったところもあるので確実とは言い難いですが、モナドの重要な性質は両モナドでもほぼ成立してるようです。