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参照用 記事

訂正+α: 逆方向グロタンディーク平坦化圏の重要性

訂正予告: バンドルの圏とグロタンディーク平坦化」で予告したように、記事「ベクトルバンドル射の逆写像: 記法の整理をかねて」を修正しました。修正箇所は、次の1行だけです。

  • 修正前: インデックス付き圏 VectBdl[-] のグロタンディーク平坦化圏が VectBundle である。
  • 修正後: インデックス付き圏 VectBdl[-] の順方向グロタンディーク平坦化圏VectBundle である。

「順方向」の一語を追加して、「順方向グロタンディーク平坦化圏」は記事「グロタンディーク構成と積分記号」へのリンクとしました。

一語修正が予告をするほどのことかと思うでしょうが、この一語修正は重要なんです。その説明を以下にします。

E, F がベクトルバンドルだとして、ftot:Etop→Ftot と fbase:|E|→|F| の組 f = (ftot, fbase) がベクトルバンドル射であることは、次の図式が可換になることです。

\require{AMScd}\newcommand{\hyph}{\mbox{-}}
\begin{CD}
E_{tot} @>f_{tot}>> F_{tot} \\
@V{\pi_E}VV         @VV{\pi_F}V \\
 |E|    @>f_{base}>> |F|
\end{CD}

ベクトルバンドルベクトルバンドル射から構成される圏を VectBundle とします。これはいいですよね。

さて、インデックス付き圏 VectBdl[-] を考えると、これはベース圏〈base category | indexing category〉Man上で定義された反変関手 VectBdl[-]:ManCAT になっています。ベース圏の射 x:M→N in Man に対して、VectBdl[x]:VectBdl[N]→VectBdl[M] と逆方向の関手が対応します。VectBdl[x] は、xによるベクトルバンドルの引き戻し x* です。

  • x*F は、VectBdl[x](F) の略記

グロタンディーク構成と積分記号」で述べた積分記号を使ってグロタンディーク平坦化を表します。ただし、無名変数(ハイフン)の使用を許します。

  • 順方向グロタンディーク平坦化圏: \int_{\rightarrow\; {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]
  • 逆方向グロタンディーク平坦化圏: \int_{\leftarrow\;  {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]

先に定義した圏 VectBundle と、順方向グロタンディーク平坦化圏は圏同値になります。

  •  {\bf VectBundle} \cong \int_{\rightarrow\; {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]

ここまでは特に間違いはありません。

しかし、実際に圏を使うとき、VectBundle は使い勝手が良くなくて、逆方向グロタンディーク平坦化のほうが便利なのです。よって、次のように定義する案もあるし、そうしている事例もあります。

  •  {\bf VectBundle} := \int_{\leftarrow\; {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]

マズイことには、僕自身が無意識に、'VectBundle' を逆方向グロタンディーク平坦化圏の意味で使ってしまったりします。ちゃんと区別するために、例えば次のように定義しておけばいいのかな。

  •  {\bf VectBundle}_{\rightarrow} := \int_{\rightarrow\; {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]
  •  {\bf VectBundle}_{\leftarrow}  := \int_{\leftarrow\;  {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph]

機械的に使えるお約束なら:

  •  {\mathcal C}_{\rightarrow} := \int_{\rightarrow\; {\mathcal B}} {\mathcal C}[\hyph]
  •  {\mathcal C}_{\leftarrow}  := \int_{\leftarrow\; {\mathcal B}} {\mathcal C}[\hyph]

このお約束を使うと、定義が異なる3つの圏が登場します。

  1. VectBundle
  2. VectBdl
  3. VectBdl

1番目と2番目は同一視可能です。

…… まー、ここらへんは未整理状態のままってことです。でも、逆方向グロタンディーク平坦化圏  \int_{\leftarrow\;  {\bf Man}} {\bf VectBdl}[\hyph] が重要なことは強調しておきます。順方向グロタンディーク平坦化圏でうまくいかないときは、逆方向グロタンディーク平坦化圏を試してみましょう。