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長時間労働について: 檜山の地雷を踏まないで 2

掛け算の順序問題: 檜山の地雷を踏まないで」において、掛け算の順序を区別することに反対するエモーショナルな理由を説明しました。ここでは、長時間労働に反対するエモーショナルな理由を説明します。

内容:

僕はムカついた

人が何かをする動機って、けっこう感情的ですよね。僕も、「カッとなってやった」がたまにあります。次の2つの記事を書いたのも、カッとなって、です。

実はね、米村さんの発言(下のツイート)を見た瞬間にムカッとしたのね。

米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長(@yonemura2006)

100mを12秒で走れる人が1000mを120秒で走れるわけではないという事実は誰でも理解できるのに、1日16時間働いても8時間働く場合の2倍の成果になるわけではないということを理解できない人が結構いるのはなぜなのか。

「なんだコイツ」って感じ*1。でも、「ムカついたぞ、バカヤロー」的発言はしたくはない -- ひとつの理由は気恥ずかしいから。素直じゃないと言えば、そのとおり。もうひとつの理由は、ムカついたときの判断は間違っている可能性が高い。過剰反応だったり誤解してたり。

それで、間違いが表面化しにくい体裁で記事を書きました*2。でも、ムカついたのが動機だから、どうしても攻撃的になりますね。「あなたの議論は論理的に杜撰だ」という形になってますが、本音は「おめえの言ってることは気に入らねー」です。

もし僕の言うことが、やっぱり過剰反応や誤解だとしたら、ごめんなさい。そこは檜山の地雷だったんです*3。踏んだ人はイノセントかも知れません。

疲労による効率低下は当たり前

三番目になるこの記事を書いた動機は、何日かたってムカつきはおさまっても「気に入らねー」感覚が残っていること、それと、knさんのコメントへの応答で、ごく短く本音を書いてしまったので、もうチョイ長い説明をしたほうがいいかな、と思ったからです。

knさんは、仕事でも陸上競技でも共通すること(アナロジー)として「疲労による効率の低下」を挙げています。米村さんご自身が、疲労と効率の問題に主眼を置いていたかどうかは分かりませんが、「かけた時間と成果は比例しない」と言っているので、疲労と効率の問題も含まれるでしょう。

ですが、長時間労働を論ずるにあたって、疲労と効率の問題なんてどうでもいいんです。だって、「疲労による効率低下はない」からと長時間労働をする/させる人なんていないでしょう。「かけた時間と成果は比例しない」なんて誰だって知ってます。陸上競技による比喩なんて不要。

例えば、締め切りまであと2日で、3日分(8時間×3)の作業が残っているとき、効率低下を見越して1日16時間働くことはありますよね。2倍の時間で1.5倍の成果を見積もっているわけです。

非効率的だからマズイのではない

いま例に出したような、締め切り前に16時間労働とかは、僕もよくやったし、皆さんも経験あるでしょう。それが悪いですか? しょうがないですよね、そんなこともあります。

長時間労働がマズイのは、それが組織の習慣、文化(とは言わねーか)として常態化しているときです。常態化した長時間労働が、効率や成果の観点から劣っているかどうかはなんともいえません。2倍の時間で1.5倍の成果が出れば、ビジネス的には「良い」という判断もあるでしょう。

米村さんの発言について、僕は次のように批判的な言い方をしました:

詭弁を反駁するために詭弁を使ってしまうと、より強力な(よりインチキな)詭弁で反論される危険があります。しかも、「それは詭弁だろう」とも言い返せません -- 自分が詭弁を弄しているので。

ここで「詭弁」と言っているのは、論理的不整合よりはむしろ、効率や成果という尺度で語っていること自体が、アンチ長時間労働にふさわしくないと思えるからです。「2倍の時間で1.5倍の成果が出ればいい」の人々と同じ土俵にいます。そこでは、論点がずれた詭弁の応酬になります。

常態化した長時間労働は、働く人や家族の心身や生活を犠牲にするからダメなんです。2倍の時間働くことで売り上げが増えたとしても、その増えた分は、働く人や家族の痛みをお金に換えたものです。効率や成果の尺度で測ってダメなのではなく、やってはいけないことだからダメなんです。

*1:言いたいことの結論(長時間労働に反対)が自分と一致していることが、かえって感情を逆なでしたのかも知れません。

*2:カッとなっても、こういう冷静さを保っているところは歪んでいるな、嫌な性格だ。

*3:地雷の在り処は、「掛け算の順序問題: 檜山の地雷を踏まないで」とそこから参照されている過去記事に書いてあります。