昨日、id:bonotakeさんがコメントにて:
このようなものを見つけてしまったので、檜山さんにお知らせしたくて。 https://twitter.com/unununum_1/status/860125300104937472
twitterのURLをたどると、平仮名が数学記号に使われている例があります。実は、僕もarXivで同じ例を見つけたばかりでした(なんたる偶然)。
米田の「よ」
赤線が引いてあるところに注目。平仮名の「よ」ですね。これは、次の論文からの引用(PDFを画像でコピー)です。
- Title: This is the (co)end, my only (co)friend
- Author: Fosco Loregian
- Pages: 84p
- URL: https://arxiv.org/abs/1501.02503
「よ」の意味は米田埋め込み(Yoneda embedding)です。yとかYとかで表記されることが多いですが、文字'y', 'Y'は他でも多用されるので、固有名詞としては弱いですよね。「よ」なら大変目立ちます。いいですね、これ。
実は去年の次の記事で、
以下のように書いています。
f:A→B に対して、f米:A米⇒B米:Cop→Set は前節で定義した自然変換です。つまり:
- (-)米 = y = (米田埋め込み)
同様に、(-)米は Cop→[C, Set] という関手で、余米田埋め込み(coYoneda embedding)とでも呼ぶべきものです。次の点に注意してください。
- (-)米 = y は共変関手 C→[Cop, Set] であるが、この共変関手の特定の値 A米:Cop→Set は反変関手である。
- (-)米 は反変関手 Cop→[C, Set] であるが、この反変関手の特定の値 A米:C→Set は共変関手である。
上付き/下付きで使う'米'を米田の星(Yoneda star, Yoneda asterisk)と呼ぶことにします。口頭では「うえヨネ」「したヨネ」と発音すればいいでしょう。
米田埋め込み(とその反変版)の演算子記法として漢字の「米」を使っていたのです。
- (米田埋め込み) = (-)米 = よ(-)
上記論文著者のフォスコ・ロアギアン*1は、論文タイトルからも察しが付くように、文芸的な修辞・装飾とか記法の選択に拘りがある人です。
しかし、「よ」はロアギアンの発案ではなくて、次が初出のようです。
- Title: The stack of higher internal categories and stacks of iterated spans
- Author: David Li-Bland
- Pages: 38p
- URL: https://arxiv.org/abs/1506.08870
Unicodeが一般的となった今なら、「よ」でも、次のように指定すれば国際的に通じます。
- Unicode Character 'HIRAGANA LETTER YO' (U+3088)
ヘブライ文字「メム」
これはヘブライ文字の例です。次の論文からの引用。
- Title: Local states in string diagrams
- Author: Paul-Andre Mellies
- Pages: 15p
- URL: https://www.irif.fr/~mellies/papers/local-states-in-string-diagrams.pdf
ヘブライ文字というと、基数を表すアレフ(U+05D0 א)が有名ですが、他の文字も使われることがあるんですね。この文字のUnicode情報は:
- Unicode Character 'HEBREW LETTER MEM' (U+05DE)
漢字の「圭」
これは、英語版Wikipedia項目 https://en.wikipedia.org/wiki/Racks_and_quandles からの引用です。代数系の名前で「圭」というのがあるんだとか。命名者は日本人・高崎光久さんです。"kei"という表記が普通みたいですが、たまに漢字で書かれることもあります。
*1:発音がForvoにもありませんでした https://ja.forvo.com/search/Loregian/ 。よって、カタカナ書きはあてになりません。[追記]「ロージエン」に近いようです。[/追記]