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参照用 記事

なんでも米田に便乗

加藤五郎さんによると、米田の補題は「圏論の大黒柱」だそうです(「圏論番外:米田の補題に向けてのオシャベリ」参照)。どのくらい重要で強力かというと(「米田、米田、米田」より):

the category theorist's joke that "all theorems are Yoneda."
...[snip]...
何でも("all theorems", "everything")米田から派生するみたいですよ。

米田はエンド/コエンドも発明し、グロタンディークより先にグロタンディーク構成のアイディアを出しています(「偉大なり、米田」参照)。

最近スピヴァック〈David I. Spivak〉は、表現可能関手に $`y^-`$ という記法を使ってますが(「米田テンソル計算 3: 米田の「よ」、米田の星、ディラックのブラケット 再論 // スピヴァックの指数記法」を参照)、$`y`$ は米田の「y」だそうです。

$`y^-`$ は余米田埋め込み〈coYoneda embedding〉になっていますが、同じ意味の記号が他にもあります。

双対的な米田埋め込みは:

  • 米田の「y」: $`(-)^y`$
  • 米田の「よ」: $`よ^{-}`$
  • 米田の「Yo」: $`{\bf Yo}(-)`$

米田の補題の主張である同型は米田同型〈Yoneda isomorphism〉と呼びます。

$`\quad \mathrm{Nat}(y^A, F) \cong F(A)`$

この同型を与える写像は米田写像〈Yoneda map〉です。マックレーンの本〈The Book〉には次のように書いてあります。(スピヴァックの $`y^A`$ は使ってないけど。)

$`\quad y:\mathrm{Nat}(y^A, F) \to F(A)`$

小文字の「y」です。スピヴァックの「y」と被ってしまいますね。別な名前を準備したほうがいいでしょう。逆方向の写像は、区別して反米田写像〈unYoneda map〉と呼んだほうが混乱が少ないです。自然変換に対する米田写像の値を(その自然変換の)米田要素〈Yoneda element〉、要素に対する反米田写像の値を(その要素の)反米田自然変換〈unYoneda natural transformation〉と呼ぶと説明に便利です。

$`\quad \mathrm{Nat}(y^A, F)\ni \alpha \mapsto (\alpha\text{ の米田要素}) \in F(A)\\
\quad F(A)\ni a \mapsto (a\text{ の反米田自然変換}) \in \mathrm{Nat}(y^A, F)\\
\qquad \alpha \longleftrightarrow a \quad \text{米田同型}
%`$

さて、関数の世界では、

  • $`x \mapsto x^a`$ はベキ関数〈power function〉
  • $`x \mapsto a^x`$ は指数関数〈exponential function〉

同様に関手の世界では次のようならいいのですが、実際はそうもいきません。

  • $`y \mapsto y^A`$ はベキ関手〈power functor〉
  • $`y \mapsto A^y`$ は指数関手〈exponential functor〉

集合圏上のベキ関手というと、まず $`y \mapsto {\bf 2}^y`$ が思い浮かぶでしょう。これは上の言い方なら指数関手です。この事情で、ベキ関手/指数関手という言葉は通用しません。

$`y^A`$ は余米田埋め込みの値であり、$`A^y`$ は米田埋め込みの値です。冠に「米田」を付けたら整合性を回復できるかも知れません。

  • $`y \mapsto y^A`$ は米田ベキ関手、あるいは単に米田ベキ〈Yoneda power〉
  • $`y \mapsto A^y`$ は米田指数関手、あるいは単に米田指数〈Yoneda exponential〉

形はベキ関数/指数関数と同じで米田の「y」を使っているので、米田ベキ/米田指数は悪くないと思うけど。