単なる集合に離散位相を入れれば位相空間とみなせます。つまり、Setを集合圏、Topを位相空間の圏として、Disc:Set→Top という埋め込み関手があるわけです。埋め込み関手Discの像である圏をDiscとしましょう; Disc = Disc(Set)、Disc⊆Top。
圏Topの部分圏で、Discを含むようなものCがあったとします。Disc⊆C⊆Top。この圏C上でうまいこと「コンパクト化」関手 K:C→C が定義されているとします。すると、JとKをこの順で結合した (J;K):Set→C は「集合のコンパクト化」を与えることになります。
Cとして正規ハウスドルフ空間(と連続写像)の圏NormHousを取り、コンパクト化関手Kとしてストーン/チェック/ウォールマン・コンパクト化を使う場合を次の記事で紹介しました。
もっと簡単なコンパクト化の方法はないかな? と思ったのですが、ありました。簡単です。が、なんだかちょっと簡単過ぎる。僕の勘違いがあるのかも知れません。とりあえず以下に書いておきます。
Aを集合、Pow(A)をAのベキ集合とします。a∈A に対して、単元集合{a}を対応させると、A→Pow(A) という埋め込みが構成できます。Pow(A)は、二元集合{0, 1}を真偽値だと考えて、ホムセット Set(A, {0, 1}) と同型です。しかし、ホムセットというのは圏の外から見えるものなので、指数集合(関数集合){0, 1}Aのほうを考えることにします。{0, 1}AはSetの対象で、集合圏に内在するモノです。この設定で、a |→ {a} は、A→{0, 1}Aと再解釈することができます。
指数集合{0, 1}Aは、Aの部分集合の特性関数の全体です。論理で言えば、A上の述語(の意味)の全体です。埋め込み A→{0, 1}A の像は、離散的なディラック関数とでも呼べるものです。a∈A に対して:
- δa(x) = if (a = x) 1 else 0
a|→δaの対応を、同じ記号δを使って δA:A→{0, 1}A と記します。
ところで、{0, 1}Aは、{0, 1}のA回の直積とみなせます。{0, 1}に離散位相を入れて、{0, 1}Aに直積位相(無限直積かもしれない)を入れれば、{0, 1}Aは位相空間です。そしてチコノフの定理から、{0, 1}Aはコンパクトです。
δA:A→{0, 1}A の像 δA(A) は閉集合とは限りませんが、位相的閉包を取ればそりゃ閉集合です。δA(A)の閉包をK(A)とすると、K(A)はコンパクト空間{0, 1}Aの閉集合なのでコンパクトです。
K(A)は、集合Aのコンパクト化になっています。Kを関手に拡張することもできます。構成の手順は単純ですよね。だから勘違いじゃないかと不安なんですけど。あるいは、複雑で難しいところがチコノフの定理に押し込められていて、見かけが単純なだけなのかも知れません。具体的な構成を追いかけると、超フィルターと同じなのかな?