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『シン・ゴジラ』を観た

映画『シン・ゴジラ』を観ました。僕が感じたことは2つ。

  1. これは怖い。
  2. (他人事ながらも)ほっとした。

ネタバレは、たぶんありません。つうか、あらすじ書いたりするの面倒だからヤラン。

まず、「(他人事ながらも)ほっとした」話。これはね、監督・特技監督樋口真嗣さん、総監督・庵野秀明さん、東宝の関係者の皆さん、-- まったく接点も何もない赤の他人なんですが、それでも、「よかったですね」と思うわけです。

去年の夏『進撃の巨人』を観ましたが、あまり出来はよくなくて、世間の評判もサンザン。樋口監督やスタッフが大人げない行動をやらかしちゃったし。興行収入もきびしかったでしょう。

東宝としては、『進撃の巨人』は『シン・ゴジラ』への助走のような意味合いもあったでしょう。それがコケちゃったから、『シン・ゴジラ』も不安だなー、的な空気もあったんじゃないか、と想像します。封切り(7月29日)の前後は、関係者はキリキリと胃が痛む思いだったんじゃないか、と想像します。

今回東宝は、製作委員会方式をとらず単独制作。いわば「社運をかけた」作品。これがコケたら、誰がどう責任とるんだろう? 他人事だけどさー、想像しただけでコッチも胃が痛くなっちゃいます。

いやほっとしました。ということは、間違いなくヒットするだろうと確信できる出来。万人にとって面白い映画はないので、批判の論点は諸々あるでしょうが、常識的に言えば傑作ですよ。日本映画と言わず、世界の水準でみても高い評価を得られるでしょう。

世界的なヒットも期待できると思います。ですが、やはりこれは日本人に刺さる要素が多いので、他の国の人が観ても我々のような感慨を抱くだろうか? たぶんそれはない。そこまでの普遍性はない気がします。

たいていの方が指摘するように、東日本大震災福島第一原発事故、あれを経験していますからね、我々は。最近の熊本地震を重ねる人もいるでしょう。『シン・ゴジラ』は特撮SF怪獣映画じゃなくて、パニック映画/災害映画です。僕のように直接被災をしてない者でも身につまされるものがあります。

パニック映画/災害映画としての出来の良さ、迫力が「これは怖い」という感想につながります。ゴジラの造形が怖い、という人もいます(実際そうです)が、もう存在自体が怖い。まったく愛嬌がない、災厄そのものです。

映画は主に政府と自衛隊の災害対応を描くわけですが、そこでのやり取りがどれ程リアルなのか、僕には分かりません。が、素人目には十分リアルに写ります。東宝怪獣映画では定番の“メーサー兵器”も登場せず、実在の(と思われる)重火器で攻撃するもまったく歯が立たない。切ないくらいに役立たず。逆に言えば、ゴジラ人智を超えて強い。破壊と殺戮がまったく容赦無いのです。

ゴジラは、いちおう生物という設定ですが、感情がない。意図もない。ほぼ機械的な本能だけ。実際の災厄というものはそういうものです。だから怖いのです。

東日本大震災3.11の夕方のニュースで、水と土の膨大な塊が田畑や家を押し潰しながら進行する映像を見ました。そのとき、家から火の手があがっていました。見たこともないし、想像もしたことがない状況。水と土に、さらに火。これがもしフィクションの一場面なら、「作り過ぎだろう、これ」と言いたくなるような映像。でも、それは実際の映像でした。

そんな記憶が残っている僕(たぶん多くの人)にとっては、作り物の映像にも「もしかしたら、あるかもしれない」という「怖さ」が押し寄せます。結果、娯楽としてのカタルシスには欠けるのですが、悲観的なラストではないので、観終わって落ち込むことはありません。僅かですがコメディ要素もあります*1。観て損はない傑作です。



[追記 date="翌日"]

事前情報は仕入れずに行ったのですが、後から「みなさん、どう思っているのかな?」と検索したら、やはり好評ですね。不満・批判は「あれが描かれてない」が多いみたい。でも、あれ以上の詰め込みは無理のような。

僕の一番の高評価ポイントは、専門家でない観客にはリアリティが感じられたところです。ですから、「理由が分からないままにゴジラ東京湾に去って行き、その後行方が知れず」というエンドであったとしても(まったくスッキリしないけど)映画としての評価はさほど下がらなかったと思います。むしろ、作戦が成功するほうが超ラッキー。

リアルっぽい災害シミュレーションにミッション遂行を主軸とするなら、家族や男女の愛情、一般の人々の思いや行動、民間企業の頑張り、ゴジラ誕生の秘密 … などを盛り込むのは無理があるし、散漫で中途半端になるでしょう。

お笑い担当のコメディエンヌは、リアリティをぶち壊していたけど、可愛いからあれでいいです。

[/追記]



[さらに追記]

[/さらに追記]

*1:ゴジラで1回、人間で数回笑いました。ギャグっぽい場面は夾雑物だと感じる人もいるでしょうが、シリアスになり過ぎないためにある程度のオチャラケはあったほうがいいと僕は思います。