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参照用 記事

圏の具象性に関する資料

検索でたまたま引っかかった次の論文をチラ見しました。$`\newcommand{\mrm}[1]{ \mathrm{#1} }
\newcommand{\cat}[1]{ \mathcal{#1} }
\newcommand{\T}[1]{ \text{#1} }
`$

これは2011年のarXivへの投稿ですが、2017年にジャーナルに載ったようです。ジャーナル版はページ数も増えています。

話題は具象的なファイブレーション〈ファイバー付き圏〉です。具象的な圏〈concrete category〉とは、集合圏への忠実関手を持つ圏です。指標(「構造記述のための指標と名前 1/n 基本」参照)で書くなら:

$`\T{signature }\T{ConcreteCategory}\T{ within } {\bf CAT} \:\{ \\
\:\T{data}\\
\quad \cat{C}\\
\quad F : \cat{C} \to {\bf Set}\\
\:\T{laws}\\
\quad F \T{ is }\T{FaithfulFunctor}\\
\}
`$

$`\T{FaithfulFunctor}`$ は別途定義されているとします。

圏 $`\cat{C}`$ に対して、集合圏への忠実関手が見つかる(存在する)とき、圏 $`\cat{C}`$ は具象化可能〈concretizable〉といいます。すべての圏が具象化可能ではないことはフォークロアとして知られていたようですが、ハッキリ述べたものに、フレイド〈Peter Freyd〉の1970年論文があります。

上記URLは、2004年のリプリント版です。コメントや注釈が追加されています。

1970年より前に具象化不可能な圏は知られていたと分かるのは、1964年に、イズベル〈J. R. Isbell〉が「どんな条件を満たす圏なら具象化可能か?」という問題を考えているからです。以下はイズベル論文のスキャンコピーです。

  • [Isb64]
  • Title: Two set-theoretical theorems in categories
  • Author: J. R. Isbell
  • Date: 1964
  • Journal: Fundamenta Mathematicae (1964) Volume: 53, Issue: 1
  • Pages: 7p (43-49)
  • URL: https://eudml.org/doc/213746

イズベルは、現在「イズベル条件」と呼ばれる条件を定義して、イズベル条件を満たす圏なら具象化可能だと示しています。

「具象化可能ならイズベル条件を満たす」はフレイドが示したようです。1970年の “On the concreteness of certain categories” らしいのですが、これはインターネット上にはないようです。少し後の論文は以下。

3年後にビナレク〈Jiři Vinárek〉がフレイドの定理の別証を与えています。