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モダンな圏論の用語法に悩む

僕らがよく知っている圏の定義に基づく議論を、「古典圏論」とか「圏の古典論」とか呼ぶ人がいます。確かに、モナドとかクライスリ圏とか言ってみても半世紀ほども前に出来た理論ですから、古典なんかもしれません。

じゃ、モダンな圏論とは何かというと、2つの方向で圏の概念を拡張して、それを扱います。

  1. 高次元化する。
  2. 定義をゆるくする。

弱n-圏(weak n-category)の概念は、高次元化とゆるい定義の両方を適用して、(古典的な)圏を一般化した概念です。当然ながら、古典圏論に比べて格段に難しく、なかなか歯が立ちません。しょうがないので、ワタシャ弱n-圏の一般論はあきらめることにしますが、その特殊例、特に計算科学と密接に関係した部分くらいはかじりたい、と思ってます。

具体的には、インデックス付き圏(indexed category)、インスティチューション(institution)、ファイバー圏(fibred/fibered category)あたり。ステファネスク師のデカルト半環圏(Cartesian Semiringal Category)も、古典圏論の範囲では扱いがたいシロモノです。

それで、何日か前からインデックス付き圏の話をはじめたのですが、毎度のことながら、定訳のない用語をどう表記するかで悩んでいます。古典圏を超える概念を扱うので、「超」とか「モドキ」の意味を持つ形容詞・副詞が登場します。だいぶ前(2005年、2006年)にも「超」「モドキ」は話題にしています。

「モドキ」の意味で使われる接頭辞、形容詞、副詞には、pseudo, quasi, pre, almost, semi, near (nearly *), weak (weakly *) などがあります。
almost, semi, near, weak は、「概」、「半」、「近」、「弱」でいいと思います。preは「前」がふさわしいでしょうが「全」と同じ発音なのが気になります(特に、全順序と前順序)。僕はカタカナの「プレ」(または「プリ」)にしています。pseudoとquasiは、「擬」か「準」でしょうが、どう割り当てるかの強い慣例はないようです。pseudoもquasiも「擬」または「擬似」を使っているケースが多いような気がします(単なる印象ですが)。

他に、pro, multi, polyは「副」「複」「多」を僕は使っています。「副」「複」が同じ音なのを気にするならどちらかをカタカナ書きでしょうね。

個人的には、「モノイダル圏」「ファイバード圏」のように、英語の語尾をそのままカタカナにするのはイヤで、「モノイド圏」「ファイバー圏」のほうが落ち着きます。もっとも、これには確固たる根拠がないので、困ったら宗旨替えするかもしれません。

実は既に、語尾のedの扱いは困っています。indexed categoryを「インデックス圏」とすると、category of indices*1 = index category と区別が付きません。fibred categoryに関しても、fibre (fiber) category は別な概念になります(単に fibre ということが多いですが)。

そもそも、edのあるなしで違う概念になるって用語法がよくないと思うのですが、言ってもはじまらない。

現状は、全然一貫性がないのですが、次の訳語にしています。

  • indexed category インデックス付き圏*2
  • category of indices インデックスの圏、ベース圏
  • fibred category ファイバー圏
  • fibre (category) ファイバー(「圏」を付けない)

ウーム、ひどい状況だ。

[追記] 以前にも似た話題を取り上げていたんだなー。

[/追記]

*1:indexesと書いてもいいらしいです。

*2:「インデックス付けされた圏」と言ったほうが感じが伝わるかも。