Globularのサンプルを追加しました。
このワークスペースは、「3Dでニョロニョロしたい: 随伴・双対・ガロア接続」に書いた内容に対するGlobularを使った補足説明です。「3Dでニョロニョロしたい: 随伴・双対・ガロア接続」を書いた時点ではGlobularを知りませんでした*1が、この話題はGlobular向きです。
言いたいことは、「圏論における随伴関手対」と「線形代数における双対空間対」は同じような定式化が出来るよ、ということです。その定式化一式を、Globularワークスペース内に揃えました。オマケとして、自然変換 α::F⇒F:C→C の随伴メイトと、線形変換 f:A→A の共軛変換(双対空間上の変換)f*:B→B (B A*)の定義を書いて(いやっ、描いて)おきました。
随伴に関するメイト(mate)と、双対に関する共軛(conjugate)は、対応する概念(同じ形の記述が出来る概念)です。随伴メイトについては、https://ncatlab.org/nlab/show/mate に一般的な定義が書いてあります。今回のは、その特殊な場合です。
Adjoint Pair and Dual Pair are similar.
Correspondence:
n-cell Adjoint Pair Dual Pair (in linear algebra) 0-cell category dummy object 1-cell functor vector space 2-cell nat. transf. linear map 3-cell snake rel. snake rel. Similar concepts have similar colors in the diagrams.
というわけで、対応する概念は同じ色で表しています。Globularで色を揃えるのはけっこう大変なんですよ。GUIのカラーピッカーはあるけど、16進数や名前による直接入力が出来ないのです。それで、だいたい揃えることしか出来ませんでした。
セルの次元 | セルの意味 | 色 |
---|---|---|
1 | 1-セルその1 | 緑 |
1 | 1-セルその2 | 紫 |
2 | 随伴・双対の単位 | 黒 |
2 | 随伴・双対の余単位 | 青 |
2 | 1セルその1上の自己射 | 黄土色 |
2 | 自己射のメイト・共軛 | サーモンピンク |
3 | ニョロニョロ関係その1 | 水色 |
3 | ニョロニョロ関係その2 | 朱色 |
3 | メイト・共軛の定義 | サーモンピンク |
3次元セルの部分だけ画面ショット:
0次元セルだけは対応関係がありません。ここがミソだとも言えます。随伴関手対の場合は、0次元セルは圏を表しています。もう少し正確に言うと、2-圏Catの対象としての圏です。さらに正確に言うと、3次元グレイ圏(Gray-category)によりシミュレートされた2-圏の対象としての0-セルです。
もう一方の双対空間対の場合は、0次元のセルに意味はありません。対象であるベクトル空間を1次元セルにbump upするために便宜上導入したダミー・オブジェクトです。0次元→1次元と「次元のゲタ」を履かせる理由は、1-セル/2-セルの横結合(horizontal composition)により、モノイド積(ベクトル空間の場合はテンソル積)をシミュレートするためです。このシミュレーション(モノイド圏をグレイ圏でシミュレートする)は形式的・一般的なもので、その具体例のひとつがベクトル空間/線形写像からなるテンソル圏のシミュレーションです。
随伴関手対の例では圏CとDは別な圏だとして色も変えてますが、C = D として同じ白色にすると、双対空間対の諸概念と区別が付かなくなります。言い換えると、単一の圏の2つの自己関手が随伴関手対になっていると、その定義は双対空間対の定義と形式的には同じになってしまうのです。なので、ある抽象レベルにおける形式化された推論は、どちらに対しても通用します*2。
Globularの左側パネル(図形のパレット)のサムネイルをクリックすると、中央の描画領域に絵が描かれます。この状態で、右のコマンドボタン、左のサムネイル、絵の適当な場所などをクリックすると何かが起こります。色々試しているとだんだん事情が飲み込めると思います。
[追記 date="2017-06-05"]
コメント欄で紹介した論説 http://pages.cpsc.ucalgary.ca/~gscruttw/publications/TMonoidNotes.pdf は、CADG(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20160805/1470358519)の創始者の一人であるクラットウェルが書いたものです。が、CADG記事の脚注にも書いたように、マウント・アリソン大学(http://www.mta.ca/)のクラットウェルのページが消失しているので、今は存在しません。現在クラットウェルはカルガリー大学のようです。
[/追記]