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参照用 記事

マルコフ圏の一族から典型例を7つ

マルコフ圏の一族(昨日の記事「マルコフ圏の一族」参照)から、典型例となる圏をいくつかピックアップしましょう。

まずは、確率論で使うマルコフ圏を3つ。

  1. SBorelStoc : 標準ボレル空間〈standard Borel space〉を対象として、マルコフ核を射とするマルコフ圏です。
  2. FinStoc : 有限集合を台とする可測空間を対象として、マルコフ核を射とするマルコフ圏です。
  3. FinDiscStoc : 有限集合を台としてベキ集合をシグマ集合代数とする可測空間を対象として、マルコフ核を射とするマルコフ圏です。(「有限離散マルコフ核に関する注意」参照。)

確率論とは別な分野からの例を3つ。

  1. Set : 集合圏もマルコフ圏です。
  2. NonDet : 集合を対象として、非決定性写像〈多値写像〉を射とする準マルコフ圏です(マルコフ圏にはなりません)。
  3. BasFdVect : 基底付きのベクトル空間を対象として、線形写像を射とする準マルコフ圏です(マルコフ圏にはなりません)。

それぞれ、素朴集合論、プログラム理論やオートマトン理論、線形代数で扱う圏です。

それと、変わった例をもうひとつ。

  • CMonAny : 可換モノイドを対象として、任意の写像(モノイド構造を保存する必要はない)を射とするマルコフ圏です。

これは、通常の可換モノイドの圏CMonとは違います。射はなんでもいいので。

以上の典型例のめぼしい特徴をまとめておきます。

番号 モノイド積 単位対象 始対象 終対象 真偽対象
1 SBorelStoc 直積 1 なし 1 2
2 FinStoc 直積 1 なし 1 2
3 FinDiscStoc 直積 1 なし 1 2
4 Set 直積 1 0 1 2
5 NonDet 直積 1 0 0 1 または 2
6 BasFdVect テンソル R 0 0 R
7 CMonAny 直積 1 1 1 2

真偽対象は、述語〈predicate〉に相当する射を考えたいときの余域のことです。

これらの典型例を調べることで、マルコフ圏一族の状況がある程度は分かるでしょう。