表題の事実は、長/ジェイコブスの以下の論文の p.11 Proposition 3.10 として記述されています。
- Title: Disintegration and Bayesian Inversion via String Diagrams
- Authors: Kenta Cho, Bart Jacobs
- Submitted: 29 Aug 2017 (v1), 8 Feb 2019 (v3)
- Pages: 39p
- URL: https://arxiv.org/abs/1709.00322
が、毎度「どうやるんだっけ? ウーン、ワカラン」となるので絵を載せておきます。
をマルコフ圏として、次の射(同時分布)を考えます。
は反転可能、つまり任意の射と分布(域が である射)に対してベイズ反転が存在するとします。射 は次のように定義します。右肩のダガーマークがベイズ反転を意味します。
は第一射影 のベイズ反転ということです。
絵を描くときの約束は:
- : 赤いワイヤー
- : 青いワイヤー
- : 三角
- : 斜線網掛けの四角
ベイズ反転の公理的な特徴付けから次が成立します。
射 は次のように定義します。
この が、最初に与えられた同時分布 の条件化になっていることを示します。そのためには、次の等式を示せばOKです。
絵算で示しましょう。
左から右に見ていくことにして; 1番目から2番目は、対角射 の余可換律です。2番目から三番目はスワップ〈対称〉に沿って射 をスライドさせています。
1番目から2番目は、 が第一射影のベイズ反転であることを使って変形(黄緑の枠内)しています。2番目から3番目は特に何もしてません(絵を整理しただけ)。
3番目から4番目は、対角射の余単位律です。最後はスワップを二度行うと何もしない、ということです。
以上で目的の等式
が示せました。 が の条件化になっています。つまり、反転可能マルコフ圏は条件化可能であることが分かりました。