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参照用 記事

負次元の圏と(N, m, n)-圏

n-圏の過剰高次射と反転原理」は僕の雑感でした。雑感の続きを書きます。

関連する記事:

負次元の圏

一般に、すべてのn-圏を対象とする(n + 1)-圏を n{\bf Cat} と書きます*1。“負次元の圏”と言い出したのはバエズ〈John C. Baez〉です。n = -1, -2 の場合の n{\bf Cat} を問題にしたわけです。

次元0周辺の n{\bf Cat} を書くと:

  • 1{\bf Cat}_{\#1} = {\bf CAT}
  • 0{\bf Cat}_{\#0} = {\bf Set} \in |{\bf CAT}|
  • (-1){\bf Cat}_{\#(-1)} = {\bf B} \in |{\bf Set}|
  • (-2){\bf Cat}_{\#(-2)} = 0 \in |{\bf B}| = {\bf B}

ここで下付きの \#r はグロタンディーク宇宙の番号で、次の系列をなしています。

\quad {\bf U}_{-2} \in {\bf U}_{-1} \in {\bf U}_{0} \in {\bf U}_{1} \in \cdots

宇宙の説明:

  • {\bf U}_{-2} : 空な宇宙。{\bf U}_{-2}空集合=偽 として次の宇宙の要素(宇宙内存在物)になる。
  • {\bf U}_{-1} : 真偽値の集合*2{\bf U}_{-1} = {\bf B} = \{0, 1\} 0 = \emptyset = \{\} = \mathrm{False} と考える。二元集合として次の宇宙の要素(宇宙内存在物)になる。
  • {\bf U}_{0} : 無限集合も存在する標準的な宇宙。通常はこの宇宙内で作業する。
  • {\bf U}_{1} : 標準的な宇宙を要素(宇宙内存在物)として含むより大きな宇宙。

n-圏を対象とする(n + 1)-圏に関して説明すると:

  • n = 0 : 0{\bf Cat}_{\#0} : 通常の集合圏。対象は宇宙 {\bf U}_0 の要素(宇宙内存在物)、つまり普通の小さい集合。0{\bf Cat}_{\#0} は1-圏。
  • n = -1 : (-1){\bf Cat}_{\#(-1)} : ブール値の集合、{\bf B} = \{0, 1\}。対象〈要素〉は宇宙 {\bf U}_{-1} の要素(宇宙内存在物)、つまり真偽値。(-1){\bf Cat}_{\#(-1)} は0-圏〈集合〉。
  • n = -2 : (-2){\bf Cat}_{\#(-2)} : 定数値 0 。宇宙 {\bf U}_{-2} そのもの。(-2){\bf Cat}_{\#(-2)} は(-1)-圏〈真偽値〉。

n \lt -2 に対する n{\bf Cat} は存在しません。

(N, m, n)-圏

前節で述べた世界観・宇宙観と、「等式的推論と高次圏論」で述べたような「すべての圏は無限次元圏である」という前提を包摂するために、圏の種別を3つのパラメータ (N, m, n) で分類することにします。

トータル順序集合〈totally ordered set〉としての自然数の集合に、最大元として \infty を追加した順序集合を {\bf N}_\infty と書くことにします。次を仮定します。

  • N, m, n \in {\bf N}_\infty
  •  m \le n \le N

(N, m, n)-圏とは、次の性質を持つ圏のことです。

  •  N \lt k であるk-射は存在しない
  •  n \lt k であるk-射は(それがあれば)すべて恒等射である。
  •  m \lt k であるk-射は(それがあれば)すべて可逆射である。

過剰高次射(「n-圏の過剰高次射と反転原理」参照)を一切認めないn-圏は(n, n, n)-圏になります。恒等射である過剰高次射をすべて認めるn-圏は(∞, n, n)-圏です。n-射の等式を(n + 1)-射と認めるだけなら(n + 1, n, n)-圏になります。

ジェイコブ・ルーリー〈Jacob Lurie〉が∞-圏と呼んでいる無限高次圏は(∞, 1, ∞)-圏と書けます。ホム圏が亜群になっている2-圏は(2, 1, 2)-圏であり、このタイプの圏に2-射の等式を認めれば(3, 1, 2)-圏となります。(∞, ∞, ∞)-圏は真性の無限圏で手に負えないシロモノです。

3つのパラメータ (N, m, n) で分類することは、単純な割に便利そうです

*1:以前はハイフンを入れて n\text{-}{\bf Cat} と書いてましたが、ハイフンは豊饒圏〈豊穣圏〉で使おうと思いハイフン無しにしました。

*2:{\bf U}_{-1} を、すべての遺伝的有限集合〈hereditarily finite set〉からなる宇宙とすることもあります。ここでは真偽値を使います。