「半加法圏の圏」で、半加法圏(=双積モノイド圏)の圏はデカルト閉圏になるだろう、とか書いたんですが、それは僕の勘違いでした。デカルト閉圏にはなりません。しかし、なにかうまいモノイド積が存在すれば、そのモノイド積に対してモノイド閉圏になる可能性はあります。つまり、次の随伴性が成立するかも知れない、ということです。
- SemiAdd(CD, E) SemiAdd(C, [D, E])
ここで、が「なにかうまいモノイド積」、[-, -]は指数です。
上記の「なにかうまいモノイド積」は、ベクトル空間のテンソル積と類似していると思えるのでテンソル積と呼びましょう。小さい圏のテンソル積を構成する問題は「テンソル積の作り方 2: 双加群の場合、小さい圏の場合」で触れたことがあります。一般的には難しい問題です。今の場合は双積構造があるので、それが手がかりを与えてくれそうです。
テンソル積を実際に構成するのは難しそうだ、という以前に、「テンソル積を構成せよ」という課題を正確に定式化することが難しいです。ベクトル空間のテンソル積については「テンソル積の作り方」で述べましたが、これはベクトル空間の場合であって、半加法圏にそのまま通用するものではありません。
ベクトル空間のテンソル積がヒントになるのは間違いないでしょうが、ベクトル空間における概念に対して半加法圏における対応物が何であるか? あんまり分かりません。どうも、基礎的な部分から準備を積み上げるしかないようです。
ちょっと考えた限りでは、「基礎的な部分」にはラックス・モノイド関手の理論がありそうです。ラックス・モノイド関手の定義と簡単な性質は次で述べています。
ラックス・モノイド関手の概念を使って、モノイド圏/対称モノイド圏のテンソル積の定義(公理的条件付け)ができるかも知れません。定義ができても構成(存在証明)ができるとは限りませんが、とりあえずは問題(課題)を記述しないと始まりません。
「モノイド圏/対称モノイド圏のテンソル積」という概念がハッキリすれば、それの精密化として「半加法圏のテンソル積」の定義(構成ではない)を記述できる可能性があります。なので、当面のサブタスクはラックス・モノイド関手を調べることでしょう。