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参照用 記事

二重圏の語法・記法、ローカルルール事例

二重圏を語るために」にて:

広く合意された約束はないので、二重圏を語るときは、ローカルルールをしっかり決めましょう。そうでないと、話がワヤクチャになります

ローカルルールの事例を述べておきます。$`\newcommand{\twoto}{\Rightarrow}
\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1} }
%`$

内容:

ペースティング図(タイル)

二重圏のひとつの2-射を表すペースティング図〈タイル〉は次のように描くことにします。


  • 射の描画方向: 縦方向、上から下
  • プロ射の描画方向: 横方向、左から右

プロ射の矢印には、何か印を付けることにします。上の図では矢印に垂直な棒ですが、TeXで書くときに一番簡単なのは、$`X_1 \not\to Y_1`$ です。TeXコードで \not\to と書いています。可換図式を描く AMScd パッケージ/拡張などでは、矢印を変更できないので、そんなときは印を付けるのを諦めます。

2-射と境界の構成素のラベル〈名前〉は次のようにします。

  • 対象のラベル: ラテン文字大文字
  • 射のラベル: ラテン文字小文字
  • プロ射のラベル: ラテン文字大文字
  • 2-射のラベル: ギリシャ文字小文字

対象とプロ射がどちらもラテン文字大文字なので、適当に区分して振り分けます。

2-射のプロファイル(境界の情報)をテキストで一度に書くのは難しいので、次のように分けて書くしかないでしょう。

$`\quad f:X_1 \to X_2\\
\quad g:Y_1 \to Y_2\\
\quad M:X_1 \not\to Y_1\\
\quad N:X_2 \not\to Y_2\\
\quad \alpha :: M \twoto N
`$

あるいは、少し書き方を工夫して:

$`\quad (f \mid \alpha \mid g) :: M \twoto N\\
\text{ where }\\
\quad \left\{\begin{array}{l}
f:X_1 \to X_2\\
g:Y_1 \to Y_2\\
M:X_1 \not\to Y_1\\
N:X_2 \not\to Y_2
\end{array}\right.
`$

いずれにしても、テキストで記述・計算はきびしいですね。

「縦・横」の使用法

ペースティング図の描き方を前節のように約束して固定すると、やはり「縦・横」は使いたくなります。用語(形容詞)としての「縦・横」をペースティング図の描画方向に合わせるとして、次のようなローカルルールになります。

  • 縦射 := 射
  • 縦射の縦結合 := 縦射の結合 := 射の結合
  • 恒等縦射 := 恒等射 ≒ 対象
  • 横射 := プロ射
  • 横射の横結合 := プロ射の外部結合
  • 恒等横射 := 外部恒等プロ射 ≒ 対象
  • 2-射の縦結合 := 2-射の内部結合
  • 2-射の横結合 := 2-射の外部結合
  • 縦結合恒等2-射 := 内部恒等2-射 ≒ 横射
  • 横結合恒等2-射 := 外部恒等2-射 ≒ 縦射

各種の恒等は次のように図示されます。

恒等縦射:
$`\require{AMScd}
\quad\begin{CD}
X\\
@|\\
X
\end{CD}
%`$

恒等横射:
$`\quad\begin{CD}
X @= X
\end{CD}
%`$

縦結合恒等2-射:
$`\quad\begin{CD}
X @>{M}>> Y \\
@| @| \\
X @>{M}>> Y
\end{CD}
%`$

横結合恒等2-射:
$`\quad\begin{CD}
X @= X \\
@V{f}VV @VV{f}V \\
X' @= X'
\end{CD}
%`$

テキスト書きで区別するなら、例えば:

  • 恒等縦射: $`\mrm{vid}_X: X \to X`$
  • 恒等横射: $`\mrm{hid}_X : X \not\to X`$
  • 縦結合恒等2-射: $`\mrm{vId}_{M:X\not\to Y} :: M \twoto M`$
  • 横結合恒等2-射: $`\mrm{hId}_{f:X\to X'} :: f \not\twoto f`$

さらに、

  • 縦結合の中置演算子記号: $`;`$ (オーバーロードする)
  • 横結合の中置演算子記号: $`*`$ (オーバーロードする)

とか決めれば、なんとかテキストで計算が可能でしょう。

域と余域

射の種類ごとに域と余域があるので、これも混乱しがちです。言葉を変えて区別することにします。

  • 縦射の域 := 域
  • 縦射の余域 := 余域
  • 横射の域 := 左域〈left domain〉
  • 横射の余域 := 右域〈right domain〉
  • 2-射の内部域 := ソース
  • 2-射の内部余域 := ターゲット
  • 2-射の外部域 := 左フレーム〈left frame〉
  • 2-射の外部余域 := 右フレーム〈right frame〉

「左右」の使い方は、プロ射が左から右に向かうという前提です。

  • 縦射の域・余域は二重圏の対象
  • 横射の左域・右域は二重圏の対象
  • 2-射のソース・ターゲットは二重圏のプロ射〈横射〉
  • 2-射の左フレーム・右フレームは二重圏の射〈縦射〉

ストリング図

ストリング図はペースティング図のポアンカレ双対をとります。1-射(縦射と横射)は一律に時計回り90度回転させると、次のようになります。

縦射を表す横ワイヤーが右から左に向かいます。これは違和感があるかも知れませんが、それほど問題にはならないでしょう。どうしても気になるなら、横射は時計回り90度回転で、縦射は反時計回り90度回転を採用してもかまいません。

ペースティング図/ストリング図のどちらか一方を使っているときでも、双対的な二種類の図が重なったイメージを持ち続けると間違いを犯しにくいと思います。