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参照用 記事

片側非退化性から両側非退化性を導く

昨日のエントリーより:

別にシリーズにはしないけど、線形代数の計算例をチマチマと出そうかな、っと。

いかにも敬遠されそうなネタだよね。でもかまわんのだ。今日も書くよ、っと。


φがU上の双線形形式のとき、次の条件が非退化性(nondegenerateness)でした。

  • ∀y∈U.(φ(x, y) = 0) ならば x = 0

これは、Φ = λx.λy.φ(x, y) と置けば次と同値です。

左右を入れ替えて、Ψ = λy.λx.φ(x, y) としたときに、Ψははたして単射か? という疑問が湧きます。結論を言えば、Φが単射ならΨも単射です(ただし、有限次元のとき)。いろいろな証明がありそうですが、「Φを使ってΨを陽に書く」ことができるので、その公式を紹介します。

Φ:U→U* の双対 Φ*:U**→U* を計算してみます。ξ∈U**とすると、双対の定義から、y∈Uに対して:

  • *ξ)y = ξ(Φy)

昨日書いたことから、x∈Uを使って ξ = x^ と一意的に書けます。これを使って少し計算します。


ξ(Φy) //↓ ξ = x^
= x^(Φy) //↓ x^の定義
= (Φy)x //↓ Φの定義
= (λt.φ(y, t))x //↓ ベータ変換
= φ(y, x)

結局、次の等式が成立します。

  • φ(y, x) = (Φ*x^)y

両辺を変数yでラムダ抽象すると:

  • λy.φ(y, x) = λy.[(Φ*x^)y]

左辺はΨxの定義そのものです。右辺にはイータ変化変換をほどこすと:

  • Ψx = Φ*(Θx)

ここで、Θx = x^ です。写像の結合(合成)を記号「・」で表すなら、

  • Ψ = Φ*・Θ

これで、Φを使ってΨを陽に書けました。同様にして次も言えます。

  • Φ = Ψ*・Θ

ΘをΦとΨで書くこともできます。

  • Θ = (Φ*)-1・Ψ = (Ψ*)-1・Φ

最初に戻って、Ψが単射かどうかですが、Ψの表示を見ればΨが可逆であることがわかります(有限次元では、U→U*単射性と可逆性は同じ)。

  • Ψ-1 = (Φ*・Θ)-1 = Θ-1・(Φ-1)*

これが“Ψの逆”の具体的な表示です。ここで、(Φ*)-1 = (Φ-1)* は使いました。