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参照用 記事

ファイブレーションにおけるデカルト持ち上げによる平行移動

久々に手描きの絵を載せます。

BEが圏で、P:EBファイブレーションになっているとします。Pはファイブレーションの射影(projection)です。Pによる対象や射の像も射影と呼びます。絵では、青色のニョロっとした矢印が射影を表しています。

このファイブレーションには切開面(cleavage)が付いているとします。切開面付きファイブレーション(cloven/cleaved fibration)です。切開面とは、ベース圏Bの射 f:A→B とB上の対象(an object over B)Yに対して、fのデカルト持ち上げ(cartesian lifting)を一意に対応させる写像です。ただし、ベース圏Bの恒等射にはEの恒等射が対応するようにします。

さて、何をやりたいかというと、ファイブレーション P:EB から同じベース圏B上に定義されたインデックス付き圏(indexed category)を作りたいのです。以下、インデックス付き圏 C[-]:BopCat の作り方を示します。

まず、B∈|B| に対する C[B] は、P(Y) = B、P(g) = idB となるようなEの対象と射からなる部分圏です。ファイブレーションに関するB上のファイバーですね。ファイバーは、EB とか P-1(B) とか書くこともあるので、C[B] = EB となります。

次にリインデキシング関手です。f:A→B をベース圏B内の射として、C[B]→C[A] という関手(これがリインデキシング関手)を定義しましょう。

g:X→Yは全体の圏Eの射で、P(X) = P(Y) = B、P(g) = idB だとします。つまり、gはB上のファイバーに入ります。gはB上の垂直射とも言います。g∈C[B] です。このgにC[A]内の射を対応させます。

Eの対象Yを決めたときの、fのデカルト持ち上げを図のように Y'→Y とします。デカルト持ち上げは1つとは限りませんが、切開面が一意的対応を与えていますから、fとYに対して Y'→Y が決まります。同様に、Eの対象Xに関するfのデカルト持ち上げが X'→X です。

E内で、X'→X とgを結合すると、X'→Y という射が決まります(図の対角の点線矢印)。X'→Y と Y'→Y はどちらもfの持ち上げになっています。デカルト持ち上げは、普遍的な持ち上げ(持ち上げの圏の終対象)なので、X'→Y' が一意的に決まります。この X'→Y' をg'とすると、(g:X→Y)|→(g':X'→Y') という写像が(切開面を前提として)定義されます。g|→g' を平行移動ということもあるようです。

今作った写像は、C[B]→C[A] という関手になります(関手になることは確認が必要)。f:A→B、h:B→C に対して C[f;h] = C[h];C[f] は、一般的には等式としては成立しません。正確に言えば、Cは BopCat という関手ではなくて擬関手ですが、だいたいのところはこんな感じです。