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参照用 記事

圏のファイブレーション

渋谷に行くのは億劫になったので、圏のファイブレーションでも調べようか、と。スピヴァックがグロタンディーク、グロタンディークと言っているのも理由があることで、グロタンディーク構成/グロタンディーク・ファイブレーションはやっぱり使うのですよ。

ファイブレーション界隈も用語がけっこう乱れているので、調べて整理しようと、Wikipedia項目 http://en.wikipedia.org/wiki/Fibred_category とnLabの http://ncatlab.org/nlab/show/Grothendieck+fibration を見比べたりました。

まず、英語の綴りがfibreとfiberがあるんですよね。とりあずfibre使うことにします。それで、fibre category と fibred category は全然意味が違います。なので、日本語で「ファイバー圏」は紛らわしいので使わないことにします。ファイバー圏とか言うのもどうも落ち着かない(僕は英語の-edとかをカタカナ語に反映させるのは好きじゃないのです)。それで結局、ファイブレーション(fibration)を使ってます。

ファイブレーションと同値な概念であるインデックス付き圏(indexed category)でも、インデックスの圏(index category)が出てきます。これは英語でも紛らわしいので、base category とか indexing category とか言うほうが多いようです。

ファイブレーションの定義の反変を共変に変えたものは、cofibred category と呼ぶこともありますが、opfibrationがいいようです。日本語だと反ファイブレーションか反対ファイブレーションでしょう。インデックス付き圏では、共変版は余インデックス付き圏と呼ぶこともありますが、反インデックス付き/反対インデックス付き圏のほうが言葉使いが揃いますね。

ファイブレーション関係の用語では形容詞としてのデカルト(cartesian)がイッパイ出てきます。cartesian morphism がクセモノで、cartesian arrow/map と同じ意味のときもありますが、cartesian functor のことを cartesian morphism と言うこともあります。そもそもcartesianは使われ過ぎなので、cartesian functor(ときに cartesian morphism)よりは、morphism of fibrations(ファイブレーション準同型)が混乱が少ない気がします。

ファイブレーションの準同型(morphism of fibrations, cartesian functor)の実体は関手の組で、さらにファイブレーションの準同型のあいだを繋ぐ自然変換があります。この自然変換は cartesian natural transformation と呼ばれます。「デカルト圏、デカルト関手、デカルト自然変換」が一群の関連した概念の系列ならいいのですが、そうではありません。「ファイバー圏、ファイバー関手、ファイバー自然変換」もセットでは使えません。fibre (fiber) functor は別な意味で使われています(→ http://ncatlab.org/nlab/show/fiber+functor)。

しかも、圏の射がデカルト(cartesian)だという定義も安定してなくて、デカルト、弱デカルト(weakly cartesian)、強デカルト(strongly cartesian)なんて言葉がありますが、三種の概念があるのではなくて、ある人のデカルトが別の人の弱デカルトだったりするのです。

C:ICat がインデックス付き圏のとき、f:i→j in I に対する C[f]:C[j]→C[i] は関手ですが、これは reindexing functor, substitution functor, reduct functor 等と呼ばれます。逆像関手(inverse-image functor)と呼ぶ人もいます。それにあわせてでしょうか、φ:EB がファイブレーションであるとき、f:X→Y in B に対して、φ(m) = f となるデカルト・アローmを、fの逆像と呼ぶことがあります。ややこしいのは、反対ファイブレーションのときは、mはfの順像(direct image)と呼ぶんですよね、ベースから持ち上げているのに。

反変でも共変でも、φ(m) = f となるデカルト・アローはデカルト持ち上げ(cartesian lifting)と呼べばいいだろう、と。ファイブレーションのファイバーに入る射を垂直(vertical)と呼んでいる例は多いので、デカルト・アローは水平(horizontal)と呼べばいいじゃないかと僕は思うのですが、水平の使用例は見つかりませんでした(何か事情があるのか?)。cleavageを固定したときのデカルト持ち上げを平行移動射(transport morphism)と呼ぶことはあるようです。

今出てきたcleavageって言葉は定訳がないようですが、英辞郎によると「裂くこと、切開、分割、裂け目、割れ目、亀裂、溝」。splitという概念も出てくるので分割、分裂は使いにくいので切開でしょうか? あるいはカタカナでクリーベッジ? 意味としてはたぶん選択でしょうが、選択って言葉じゃ平凡過ぎますね。「cleavageを固定した」という意味の形容詞はclovenとcleavedの両方の例がありました。

ウーム、ややこしい。ですが、依存型の議論でもファイブレーションが必要そうなので、まーしょうがない。