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参照用 記事

カルタン微分計算系はいいぞ

昨日一昨日話題にしたカルタン微分計算系〈Cartan calculus〉ですが、これはとても良いですね。知名度と人気はあまりないらしく、まとまった資料もないのですが、多様体上の微分計算を整理する枠組みとしてすごく便利です。

3つのオペレータ d, L, i に関する6つの等式(うち5つは交換子で書ける)にまとめられているのが素晴らしい。

  1.  d\circ d = 0
  2.  [d,  L_X] = 0
  3.  [d, i_X ] = L_X
  4.  [L_X,  L_Y] = L_{[X, Y]}
  5.  [L_X,  i_Y] = i_{[X, Y]}
  6.  [i_X, i_Y] = 0

それぞれの公式が、どのオペレータ達を関係付けているかを表にまとめると:

d L i
d 公式 1 公式 2, 公式 3 公式 3
L - 公式 4 公式 3, 公式 5
i - - 公式 6

“公式3=マジック公式”は、3つのオペレータのあいだの関係を示しています。

公式を番号で識別するのは辛いので、名前を付けておきましょう。

  1. 微分の平方零性〈nilquadraticy | square-zero property〉
  2. 微分とリー微分の交換可能性
  3. カルタンのマジック公式
  4. リー微分のリー準同型性(X \mapsto LXリー代数の準同型になっていること)
  5. リー微分と内微分の交換関係
  6. 微分の交代性〈反対称性〉(iX\circiY の X, Y を入れ替えると符号が変わること)

d, L, i はどれも、階付きベクトル空間〈graded vector space〉Ωの自己準同型写像です。オペレータの次数も付けて書けば:

  1. dkk→Ωk+1 (1次のオペレータ)
  2. Lkk→Ωk (0次のオペレータ)
  3. ikk→Ωk-1 (-1次のオペレータ)

リー微分Lの0階部分 L00→Ω0 は、Dとか∂とも書かれ、L0X は、DX, ∂X あるいは単に X とも書かれます。このリー微分の0階部分が偏微分方向微分〉と呼ばれる微分演算になります。偏微分を別扱いしてもいい(そのほうが分かりやすい気もする)ですが、リー微分の一部に吸収したほうがスッキリします。

カルタン微分計算系の3つのオペレータと6つの等式をキチンと記述するには、その下部構造や周辺構造を考える必要があります。6つの等式以外に、ライプニッツ律〈ライプニッツの法則〉、ヤコビ律〈ヤコビの恒等式〉、シュバレー/アイレンベルク微分(の定義)、Ωのグラスマン代数構造なども考慮する必要があります。カルタン微分計算系は、それら、関連する諸々の事柄を整理してまとめ上げるテンプレート〈様式 | 書式〉を提供します。

通常の微分計算を、カルタン微分計算系をテンプレートにして整理できれば、微分計算の拡張や変形を考えることもできるでしょう。


[追記 date="当日"]
3つのオペレータ d, L, i と6つの公式との関係を絵に描きました。


[/追記]