「シュバレー/アイレンベルク関手の話 // 微分インフラとシュバレー/アイレンベルク関手」に次のように書きました。
多様体上で微分計算をするときに必要な演算〈操作〉には何があるでしょうか。並べてみます。
[...snip...]
上記の4種の微分操作〈導分〉達〈four derivation operators〉を備えたシステムを微分インフラ〈differential infrastructure〉と呼びましょう。「微分インフラ」は、厳密な定義を持つ言葉ではなくて、雰囲気な言葉ですが、上記4種の微分操作の存在は念頭に置きます。
モヤッとした概念に名前を付けたのですが、もっとハッキリした定義があるようです。Cartan calculus というものです(昨日知った)。
"calculus"を「微分計算系」と訳してカルタン微分計算系と呼ぶことにします。リー微分、外微分、内微分を持つような計算系であり、それらの微分達の相互関係が次の等式達で規定されています。
nLab項目 Cartan calculus には次の形の等式が載っています。
- (上記 3)
- (上記 4)
- (上記 5)
- (上記 6)
等式の左辺で使われている括弧積は交換子積で、 と定義されて、プラスかマイナスかは X, Y の次数〈grade | degree〉で決まります。ただし、等式の右辺に出てくる括弧積はリー代数組み込みの括弧積です。
最初に挙げた6つの等式はすべてが独立(依存関係がない)ということではなくて、最終的にこれらが揃えばいい(カルタン微分計算系と呼ぶにふさわしい)ということでしょう。実際の例においては、幾つかの等式は自明になることがあります。キモとなる等式は で、カルタンのマジック公式〈Cartan's magic formula〉と呼ばれています。他の等式もカルタン由来です。
モヤッとした概念“微分インフラ”を、カルタン微分計算系と定義すれば、構成素と構造、満たすべき性質(等式的な公理)がハッキリして、(オフィシャルに)議論の対象にできます。よかった、よかった。