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参照用 記事

笑いが恐怖に変わるとき:江本勝さんと郡司ペギオ-幸夫さん

「僕がだんだんと郡司ペギオ-幸夫さんに批判的になっていった様子」(今日の別エントリー):

この引用だけでは、僕の心境が変化した理由は読めないでしょうね。またそのうち書きます。

今日のうちに書きます。

水の詐欺師・江本勝さんのときと似てると思います。江本さんや郡司さんに対する僕自身の好奇心のあり方はずっと変わってなくて「おもしろいな」って気分のほうが強いのです。当初は「こんなことをマに受けるヤツはいないだろう」みたいな甘い認識だったのが、けっこう信じている人が多い事実に気付いて、「それはないだろ/マズイ、ひじょーにマズイ」と思い直す、というパターン。

「さらに「水は生きている」-- ウチには子供がいるってこと」から引用します:

僕が今回なんでショックを受けてしまったかというと、江本本<えもと・ぼん>へのコメントが43件もあるのに、ほとんどがマジに書いてること。ムキになっての批判や意地悪な揶揄<やゆ>はともかくも、オチョクルのが健全でしょ。「おまえら、ここは笑えよ」って感じなんだけど。

さらに決定的に笑いが恐怖に変わってしまったのは、江本氏講演のビデオ。江本さんの話自体は想像の範囲内だったけど、しかし、あんな話を子供の前でさせるってことが一体全体どういうこと?! 「象の写真を水に見せたら、象さんの形の結晶ができて、しめ縄の写真を見せたらしめ縄の形の結晶ができる」とか、そんな話ですよ。

これに比べれば、郡司さん問題のシリアス度は全然低いのですが、状況は似てます。

  1. 江本さんは、オフィシャルな場では、「これは科学ではない、私のポエムだ」と言っています。
  2. しかし、著書の中ではそれが科学であるかのように装っています。
  3. 多くの人が、江本理論に科学的な裏付けがあると信じています。
  1. 郡司さんは、オフィシャルに「これは数理科学だ」とは言ってないと思います(おそらくだけど)。
  2. しかし、著書の中ではそれが数理科学であるかのように装っています。
  3. 多くの人が、郡司理論に数理的な裏付けがあると信じています。

僕の郡司さんに対する当初の態度は「おもしろいんだから笑えばいいじゃん」。だけど、笑ってない人がいるようなので、驚くと共に困惑(軽い恐怖)を感じたのです。

ここは笑いどころ

「象の写真を水に見せたら、象さんの形の結晶ができて、しめ縄の写真を見せたらしめ縄の形の結晶ができる」って話は、ふつう笑いますよね。ゲラゲラじゃなくてもニヤニヤとか。あるいはポエムとしては確かにほほえましい、とか。それに科学的根拠があるなんて思いもしないでしょ。

もうひとつ笑える話、いや笑うべき話。昔のエントリーで取り上げたナノクラスター水の広告ね。

水道水などと比べ、ナノクラスター水は水分子の集合体が均一で非常に小さいため身体に浸透しやすく、細胞のひとつひとつをイキイキさせてくれます。


粒子が細かくなると、身体へ浸透しやすくなり、飲んだ時には非常にまろやかに感じます。

これがジョークじゃないんですよ。何人かの人は、この広告の図*1を科学的な裏付けと受け取ってしまうらしい。「日本の理科教育はどうなっているんだ」と愕然としませんか。

僕がいう「笑いどころ」ってのは、こういうことです。ここは笑わなきゃいけない。マに受けちゃいけないのですよ。

郡司さんの笑いどころ

僕がちゃんと(いや、それはあやしい)読んだ郡司さんの著作は20ページの論文記事だけですけど、笑いどころが満載。どの段落をとってもちゃんと笑えるのだけど、キリがないから一箇所選んで取り上げたのが:

無矛盾な形式的体系を構成するためには、可能世界は先見的に見渡されねばならない。だから我々は、可能世界全体を、Dに「何もしない」という操作を付け加えておくことで定義せねばならない。

この文言が登場する文脈は、自由生成された半群Dに単位元を付け加える(という、ただそれだけの)話ですぜ。代数系と数理論理学を多少ともかじった人間なら笑うしかないでしょ。

なにが不快なのか

僕が江本さんや郡司さんに(面白さは認めても)不快を感じるポイントは、「なんでそこで数理科学の概念・用語・記法を使うんだよ」ということ。もともと数理的な話をしてないのなら不必要でしょ、そんなこと。言葉を本来の意味とは違った用法で使いたいなら、前もって定義すべきでしょ。数理科学の概念・用語・記法を使うことが、伝達・コミュニケーションに役立ってないどころか誤解と困惑しか与えないのだから、「権威付けに使っている、まやかし、こけおどし」と非難されてもしょうがない。

もし「権威付けに使っている、まやかし、こけおどし」を意図的にやっているなら、法的な意味では責められないし悪気もないかもしれないが、やっぱり詐欺だね。



[追記]

たけをさんも同じ話題で似たことを書いてます。

直接間接に数学に依存するような分野とはまったく別なナニモノカとして郡司哲学を捉えるならば、僕がどうこう言えることじゃないので、何も口を挟みません。だけど、郡司さんの著作に出てくる、圏論、論理、代数系などの話は、(1)意味不明か(2)間違っているか(3)正しいけど自明かのどれかだと思いますよ。そうじゃないと言う人がいたら、是非に是非に是非に是非に、実例の引用なり解釈を具体的に具体的に具体的に具体的にハッキリと示してください。

[/追記]

*1:もっと笑うために:図は2次元で100個と書いてありますが、実際にはナノクラスター水分子は同じ体積に1000個入りますよね。原子の質量を一定とするなら、1リットルで1トンになります。