ではなくて、次のnLab項目を参照してください。
nLab項目は一般的な設定で説明していますが、特定状況下で具体的なビッグサイトを利用する話をします。利用目的は微分幾何のためです。
Manをなめらかな多様体の圏とします。Manのなかで話をするので、以下、形容詞「なめらかな」は省略します。Manのなかでなにかすることを、大ざっぱに微分幾何〈differential geometry〉と呼ぶことにします。
j:N→M in Man が開埋め込み〈open embedding〉だとは、次のことだとします。
一番の条件を満たしても、二番を満たすとは限りません。例えば、N = {x∈R | -1 < x < 1}, M = R を二つの多様体とみなして、j(x) = x3 とすると、一番の条件を満たしますが、x = 0 で二番の条件を満たしません。
開埋め込みの全体はManの部分圏になるので、それを OEMan とします。M∈|Man| に対して、オーバー圏 OEMan/M を(nLabの定義と少し違いますが)Mのビッグサイト〈big site〉と呼びます。一方、Mの開集合の全体に包含順序を考え、それを圏とみなしたもの Open(M) を、Mのスモールサイト〈small site〉リトルサイト〈little site〉と呼びます*2。
ビッグサイトもリトルサイトも圏です。「サイト」と呼ばれるのは、被覆に関する構造を持つからですが、そこは割愛します。
リトルサイトをビッグサイトに標準的に埋め込むことができます。ビッグサイトに同値関係を入れてリトルサイトを再現することもできます。したがって、リトルサイトとビッグサイトは大差ないことになります。しかし、ビッグサイトのほうが話が簡単になることがあるので「ビッグサイトを積極的に使おう」というスローガンのもとの微分幾何がビッグサイト微分幾何〈big-site differential geometry〉です。
ビッグサイト微分幾何を試みるにあたって、些細な、しかし気になる問題があります。説明します。
F:Manop→C を、Man上の反変関手とします。Fから、OEMan/Mop→C が自然に誘導されます。誘導された関手を FM:OEMan/Mop→C とします。具体例を挙げると、M C∞(M) は Manop→CRng という可換環の圏への反変関手なので、C∞M:OEMan/Mop→CRng が誘導されます。
F, G:Manop→C はふたつの反変関手、α::F⇒G は自然変換とします。誘導されたふたつの反変関手 FM, GM:OEMan/Mop→C のあいだに、誘導された自然変換も存在します。誘導された自然変換を αM::FM→GM と書くのが自然でしょう。
しかし、αM という書き方は普通 αM:F(M)→G(M) という成分の意味で使います。困った。成分の書き方のほうを変えます。自然変換αのM成分は、αM:F(M)→G(M) にします。
すると、
- For j∈|OEMan/Mop|,
FMj:FM(j)→GM(j) in C
と書けます。記号の乱用で、j:N→M in OEMan/Mop を単にNと書けば、
- FMN:FM(N)→GM(N) in C
です。
具体例を挙げると; M Ω(M) を(1次の)微分形式の空間を対応させる反変関手とします。C∞(M) と Ω(M) を一旦R-ベクトル空間とみなすと、外微分作用素 d は、
- d:C∞⇒Ω:Manop→R-Vect
特定の多様体Mと、特定の開埋め込みNに関する外微分作用素 d の成分は:
- dMN:CM∞(N)→ΩM(N) in R-Vect
これは、記号の乱用を含むので、正確には次の可換図式になります(自然変換の成分は上付き添字!)。
ここで、C∞(j), Ω(j) は層の制限写像になっています。この可換図式は、外微分作用素が制限写像と整合することを意味します。
言いたかったことは:
- リトルサイトの代わりにビッグサイトを使いたい。
- 自然変換の成分添字を上付き添字に変更したい。
*1:https://www.cruisebe.com/tokyo-big-sight-japan の案内写真
*2:[追記]https://ncatlab.org/nlab/show/little+site を見ると、スモールサイトよりリトルサイトのほうが良さそうです。「リトル vs ビッグ」「スモール vs ラージ」という対比ですね。[/追記]