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参照用 記事

モナド達の上のモナド: ストリート・モナド

モナド達が作る圏(実際は2-圏)の上に、とあるモナドが載っています。ストリート・モナド〈Street monad〉っていうモナドです。ストリート・モナドは我々が普段扱っているモナド達より上のレベルに居るモナドの典型例ですね。ストリート随伴系〈Street adjunction〉から得られるモナドです。

内容:

モナドに関する過去記事

昨日〈2021-03-04〉「モナドの分解の比較定理」という記事を書きました。たまに、モナド・マイブームが来て、そのたびに幾つか記事を書きます。ここ4年くらいの記事を挙げます。日付が分かるように、生のURLを載せます。

  1. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20170111/1484122584
    モナド論をヒントに圏論をする(弱2-圏の割と詳しい説明付き)
  2. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20180907/1536287438
    モナドはモノイドだが、モノイドじゃない
  3. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20181226/1545810581
    最近のモナド論の概観と注意事項 1/2
  4. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20190108/1546939110
    最近のモナド論の概観と注意事項 2/2
  5. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20190115/1547518853
    リストモナドとテンソル空間モナドのあいだの準同型射
  6. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/20190116/1547632114
    ベックの分配法則の事例と計算法
  7. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/01/29/090423
    さまざまなモナド類似物とベックの分配法則
  8. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/01/30/100636
    複合モナドから花輪積へ
  9. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/01/31/085401
    花輪?
  10. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/02/08/152309
    随伴系の圏の多様性
  11. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/02/12/120707
    随伴系の二重圏
  12. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2019/11/13/123505
    モナドの自由代数
  13. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2020/01/28/171033
    モナド、双圏、変換手
  14. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2020/01/29/170558
    モナド、双圏、変換手」への補遺
  15. https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2021/03/04/181132
    モナドの分解の比較定理

なんとなくモナド・マイブームが来ることもありますが、モナドを使おうとして「ダメだ、モナド力が足りてない」と思って蒸し返すこともあります。今回は「モナド力不足」の理由で、またモナドをいじっています。

随伴系とストリート・モナド

バヴロヴィック/ヒューズの次の論文があります。

形容詞の nuclear は随伴系が持つ性質で、随伴系を構成する圏のひとつが決まると相方が自動的に決まるようなものです。一方、与えられた随伴系の nucleus とは、随伴系から一定の手順で取り出される随伴系で、それは nuclear な随伴系になっています。

kernel とかぶらないように、nuclear を核型(形容詞)、nucleus核心(名詞)と訳すことにします。

核型随伴系は、古くから研究されていたようですが、これといって名前がなかったそうです。バヴロヴィック/ヒューズ論文の主要な結果は; 核型随伴系がなす圏 Nuc が、ストリート・モナド \stackrel{\leftarrow}{\mathfrak{E}},\:\stackrel{\leftarrow}{\mathfrak{M}} (ストリート・モナドは2つあります)のアイレンベルク/ムーア圏と圏同値になる、ということです。

「ふーん、そうなんだ」とは思いますが、モナド力不足でよくわかんないです。

バヴロヴィック/ヒューズの記法

昨日の記事から引用:

随伴系の書き方は毎度悩むのですが(「随伴系の書き方」「随伴に関する注意事項」参照)、以下の図の状況を (F -| G, η, ε)/(C, D) と書くことにします。

[...省略...]

バヴロヴィック/ヒューズが随伴系をどう書いているかというと:

\quad F = (F^\ast \dashv F_\ast:\mathbb{B} \to \mathbb{A})

圏(厳密2圏CatまたはCATの対象)を表すのに黒板文字(白抜きの太字)を使っています。これは僕は使わないな。別にどっちでもいいけど。

随伴系全体を一文字'F'で表して、左関手を上付きスター、右関手を下付きスターで表しています。随伴系の単位/余単位は明示されてませんが、必要に応じてギリシャ文字 η, ε で表します。

問題は(人によりバラバラで毎度確認しなきゃならない点は)プロファイル \mathbb{B} \to \mathbb{A} が何を表しているかです。バヴロヴィック/ヒューズでは、右関手のプロファイルです。たぶん、 F_\ast:\mathbb{B} \to \mathbb{A} の部分を読んで辻褄があうように決めたのでしょう。でも、アルファベット順がひっくり返っているのは、 F^\ast:\mathbb{A} \to \mathbb{B} を考える場合のほうが多いからでしょう、たぶん。

随伴系 F から誘導されたモナド\stackrel{\leftarrow}{F} と書きます。誘導されたコモナド\stackrel{\rightarrow}{F} です。矢印の向きに関する事情は分かりませんが(事情なんてないかも)、そう約束されています。

モナド \stackrel{\leftarrow}{F}アイレンベルク/ムーア圏は \mathbb{A}^{\stackrel{\leftarrow}{F}} 、コモナド \stackrel{\rightarrow}{F}アイレンベルク/ムーア圏(余代数の圏)は \mathbb{B}^{\stackrel{\rightarrow}{F}} です。

アイレンベルク/ムーア圏を表すために、モナドを上付きにする記法はまーまー使われてますね。となると、クライスリ圏(と余クライスリ圏)は下付きで \mathbb{A}_{\stackrel{\leftarrow}{F}},\; \mathbb{B}_{\stackrel{\rightarrow}{F}} だと思いますが、パッと見たところでは出てきてないです。使わないのかな?

短い記法を使って記述を簡潔にしようとしています。確かに、この短い記法は便利そうです。

様々な関手も2文字からなる短い名前なんですが、少し長めの名前も付けておきます。

関手 短い名前 長めの名前
モナドアイレンベルク/ムーア分解 EM MndEM
モナドアイレンベルク/ムーア分解 EC CmndEM
モナドのクライスリ分解 KM MndKl
モナドのクライスリ分解 KC CmndKl
随伴系からのモナドの構成 AM AdjToMnd
随伴系からのコモナドの構成 AC AdjToCmnd

2文字名前のネーミングルールは:

  • 最初の一文字: アイレンベルク/ムーア分解 E、クライスリ分解 K、随伴系からの構成 A 。
  • 二番目の文字: モナドに関して M、コモナドに関して C 。

ストリート随伴とストリート・モナド/コモナド

ストリート随伴は2つあって、アイレンベルク/ムーア型ストリート随伴〈Eilenberg-Moore style Street adjunction〉 \mathfrak{E}クライスリ型ストリート随伴〈Kleisli style Street adjunction〉 \mathfrak{M} です。それぞれ、ドイツ文字で 'E' と 'M' です。


\mathfrak{E} = (\mathfrak{E}^\ast \dashv \mathfrak{E}_\ast: {\bf Mnd} \to {\bf Cmn})\\
\mathfrak{M} = (\mathfrak{M}^\ast \dashv \mathfrak{M}_\ast: {\bf Cmn} \to {\bf Mnd})

Mndモナドの圏、Cmn はコモナドの圏です。これらは2-圏になりますが、バヴロヴィック/ヒューズは2-射〈2-セル〉を可逆なものに限っていて、射のあいだに同値関係が入った圏のように扱えます。一般的な2-圏だと煩雑になるので、この単純化はよいんじゃないでしょうか。

2つのストリート随伴を図にすると次のようです。


\xymatrix{
 *{\bf Mnd} \ar@{}[dd]|{\dashv} \ar@/^10pt/[dd]^{\mathfrak{E}_\ast}
 & {} 
 & *{\bf Mnd} \ar@{}[dd]|{\dashv}  \ar@/_10pt/[dd]_{\mathfrak{M}^\ast}
\\
 {} & {} &
\\
 *{\bf Cmn} \ar@/^10pt/[uu]^{\mathfrak{E}^\ast}
 & {}
 & *{\bf Cmn} \ar@/_10pt/[uu]_{\mathfrak{M}_\ast}
}

これらのストリート随伴をどう定義するかというと、左右の関手については次のようです。

  1. \mathfrak{E}^\ast := CmndKl;AdjToMnd
  2. \mathfrak{E}_\ast := MndEM;AdjToCmnd
  3. \mathfrak{M}^\ast := MndKl;AdjToCmnd
  4. \mathfrak{M}_\ast := CmndEM;AdjToMnd

随伴の単位/余単位とニョロニョロ関係式も必要ですけどね。

2つのストリート随伴から、4つのモナド/コモナドが構成できます。

  1. モナド \stackrel{\rightarrow}{\mathfrak{E}}/{\bf Mnd}
  2. モナド \stackrel{\leftarrow}{\mathfrak{E}}/{\bf Cmn}
  3. モナド \stackrel{\leftarrow}{\mathfrak{M}}/{\bf Mnd}
  4. モナド \stackrel{\rightarrow}{\mathfrak{M}}/{\bf Cmn}

これらがストリート・モナド/コモナドですが、代表をひとつ選ぶなら、モナド達の圏 {\bf Mnd} 上のモナドである \stackrel{\leftarrow}{\mathfrak{M}}/{\bf Mnd} でしょう。

おわりに

核型随伴系とストリート・モナドに関しては「モナド力不足でよくわかんない」状態なので、今日はこれだけです。バヴロヴィック/ヒューズ論文には色々な具体例が載っているので、具体例を調べてみます。

バヴロヴィック/ヒューズは具象的な随伴とモナドを相手にしているので、これを随伴/モナドの形式論〈formal theory of adjunctions/monads〉で議論したらどうなんだろう? とか疑問も湧きますが、ちょっと見当付きません。