圏論の「普遍性」という言葉は、曖昧多義で何を言っているか分からなくなるリスクがあるので、個人的には使わないようにしています。「普遍性」「普遍対象」などの代わりに、(とある圏)の終対象または始対象である旨を明示することが多いです。
とはいえ、「普遍性」は圏論の中核的な概念だと認識している人も多いわけで、「使うな」は無茶です。どんなところが曖昧多義なのか、どう使えば意味がハッキリ伝わるのかを考えてみます。$`\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}}
\newcommand{\twoto}{\Rightarrow }
\newcommand{\In}{\text{ in } }
%\newcommand{\Iff}{\Leftrightarrow }
\newcommand{\hyp}{\text{-} }
\newcommand{\op}{\mathrm{op} }
\newcommand{\id}{\mathrm{id} }
\newcommand{\vin}{ \style{display: inline-block; transform: rotate(-90deg)}{\in} }% \vin = lvin
\require{color} % 緑色
\newcommand{\Keyword}[1]{ \textcolor{green}{\text{#1}} }%
\newcommand{\For}{\Keyword{For } }%
\newcommand{\Define}{\Keyword{Define } }%
\newcommand{\Subject}{\Keyword{Subject } }%
%\newcommand{\Let}{\Keyword{Let } }
`$
内容:
関連する記事:
前層の表現系
「普遍性〈universality | universal property〉」は何に対して使う言葉かというと、表現可能関手(定義は後述)に関して使う言葉です。表現可能関手は、関手の一種というよりは、幾つかの構成素からなる構造〈structure〉あるいは系〈system〉と捉えたほうがいいでしょう。そこで、この構造/系を前層の表現系〈representation system for a presheaf〉と呼ぶことにします。表現可能関手は、この構造/系の構成素、あるいは構成素になり得る関手だと(後から)定義します。
前層の表現系は次の構成素からなります。
- 0次元の構成素: 局所小圏 $`\cat{C}`$
- 1次元の構成素: 反変関手 $`F: \cat{C}^\op \to {\bf Set}`$
- 1次元の構成素: 対象 $`A \in |\cat{C}|`$
- 2次元の構成素: 可逆な自然変換 $`\varphi :: \cat{C}(\hyp, A) \twoto F`$
- 2次元の構成素: 集合の要素 $`a \in F(A)`$
これらの構成素は大きい(小さくないかも知れない)圏達の2-圏 $`{\bf CAT}`$ 内に配備・展開されて構造/系を形成します*1。圏の対象や集合の要素の次元が 1, 2 である理由はすぐ後で説明します。
まず、各構成素のプロファイル(域・余域の仕様)を書き出します。
$`\quad \cat{C} \in |{\bf CAT}| \:\text{ locally small}\\
\quad F: \cat{C}^\op \to {\bf Set} \In {\bf CAT}\\
\quad A \in |\cat{C}|\\
\quad \varphi :: \cat{C}(\hyp, A) \twoto F : \cat{C}^\op \to {\bf Set} \In {\bf CAT}\:\text{ invertible}\\
\quad a \in F(A)
`$
圏の対象や集合の要素もすべて2-圏 $`{\bf CAT}`$ 内のk-射(k = 0, 1, 2, 3)として捉えるために、対象は自明圏〈単位圏〉$`{\bf I}`$ *2からのポインティング関手と同一視します。集合の要素は、まず集合圏内で単元集合 $`{\bf 1}`$ からのポインティング写像と同一視、そのポインティング写像を自明圏からの関手のあいだの自然変換と同一視します。すると、上のプロファイルが以下の形に揃います。
$`\quad \cat{C} \in |{\bf CAT}| \:\text{ locally small}\\
\quad F: \cat{C}^\op \to {\bf Set} \In {\bf CAT}\\
\quad A : {\bf I} \to \cat{C} \In {\bf CAT}\\
\quad \varphi :: \cat{C}(\hyp, A) \twoto F : \cat{C}^\op \to {\bf Set} \In {\bf CAT} \:\text{ invertible}\\
\quad a :: {\bf 1} \twoto F(A) : {\bf I} \to {\bf Set} \In {\bf CAT}
`$
別に形を揃える必要性はなくて、単に“気持ちいい”からやってるだけです*3。
これらの構成素達がすべて独立というわけではなくて、$`a`$ は $`\varphi`$ から定義可能です。その定義は:
$`\quad a := \varphi_A(\id_A) \;\in F(A)`$
これは、米田写像 $`{\bf y}`$ (下)による値を計算しただけです。米田写像(米田の補題に登場する同型写像)は可逆なので、$`a`$ から $`\varphi`$ を計算することもできます。
$`\quad {\bf y}: [\cat{C}^\op , {\bf Set}](\cat{C}(\hyp, A), F) \to F(A) \In {\bf Set}\\
\For \alpha \in [\cat{C}^\op , {\bf Set}](\cat{C}(\hyp, A), F)\\
\quad {\bf y}(\alpha) = \alpha_A(\id_A)
`$
$`\varphi`$ か $`a`$ のどちらか一方で情報としては十分なので、前層の表現系の定義は冗長です。が、冗長が悪いわけでもありません。上記の $`\varphi`$ と $`a`$ の関係式(等式)、それと $`\cat{C}`$ の局所小条件、$`\varphi`$ の可逆性(これも等式で書ける)が前層の表現系に課せられた条件〈法則 | 公理〉です。混乱の心配がなければ、前層の表現系を単に表現系〈representation system〉とも呼びます。
表現系の構成素達の役割り名(呼び名)を決めておきます。
記号ラベル | 役割り名 |
---|---|
$`\cat{C}`$ | (特になし) |
$`F`$ | 前層〈presheaf〉 |
$`A`$ | 表現対象〈representing object〉 |
$`\varphi`$ | 表現自然変換〈representing natural transformation〉 |
$`a`$ | 普遍元〈universal element〉 |
前層は一般的な用語(集合圏に値を持つ反変関手のこと)ですが、ここでは役割り名としても使います。表現系の前層(役割り名としての前層)となっている関手は、表現可能である〈representable〉といいます*4。ある関手が表現可能とは、対応する表現対象、表現自然変換、普遍元が存在して、それらが全体として表現系を形成することです。
「普遍性」「普遍対象」「普遍射」という言葉は後で話題にします。とりあえずは必要ありません。呼び名と言葉づかいの件は、構造/系の話と切り離して扱うことにします。
普遍構成法
前層の表現系という構造/系は何のために使うのでしょう? それは普遍構成法(後述)を記述する枠組みとしてです。
圏 $`\cat{C}`$ のなかで、興味深い対象を構成したい、あるいは興味深い対象が最初から在るとみなすなら、それを特定したいとします。ここで「興味深い」は国語辞書的に(自然言語の用法として)使っているだけで、何らかの形式的定義があるわけではありません。
興味深い対象とそれを構成する方法で、ある程度はパターン化/アルゴリズム化されているものがある、と。まー、汎用・定番な方法ですね。それに名前を付けておこう、と。それが普遍構成法〈universal construction〉です。
で、その普遍構成法とはどんな方法であるか? nLab項目 universal construction に、簡単な(やや曖昧な)説明と事例が載っています。ここでは、普遍構成法で“興味深い”モノを構成する/見つける手順を示しておきます。
- 圏 $`\cat{C}`$ 上で定義された前層(集合圏に値をとる反変関手) $`F:\cat{C}^\op \to {\bf Set}`$ を考える。
- 前層 $`F`$ が表現可能なら(表現可能でないときもあるが)、その表現対象 $`A`$ が“興味深い”対象となる。
- 表現自然変換 $`\varphi:: \cat{C}(\hyp, A) \twoto F(\hyp)`$ も“興味深い”。
- 表現自然変換 $`\varphi`$ は、集合 $`F(A)`$ の要素としてエンコードされる。エンコード先の要素である普遍元 $`a`$ も“興味深い”。
普遍構成の例を出します。最初に設定する前層は次のとおりです。$`\Subject`$で、定義すべきモノを宣言してから実際の定義を続けます。
$`\Subject \mrm{K} : \cat{C}^\op \to {\bf Set}\\
\quad \For X \in |\cat{C}|\\
\quad \Define \mrm{K}(X) := {\bf 1} = \{0\} \;\in |{\bf Set}|\\
\quad \For f:X \to Y \In \cat{C}\\
\quad \Define \mrm{K}(f) := \id_{\bf 1} \In {\bf Set}
`$
$`\cat{C}`$ のすべての対象/射が、特定された単元集合 $`{\bf 1}`$ とその恒等写像につぶれてしまうので、反変も共変もありゃしないのですが、ここでは $`\mrm{K}`$ は反変関手だとします。
普遍構成法の第ニステップは、当該の前層 $`\mrm{K}`$ が表現可能かどうかを考えます。
$`\quad \cat{C}(\hyp, ?) \cong \mrm{K} \In [\cat{C}^\op, {\bf Set}]`$
疑問符に入る対象があれば、それは前層 $`\mrm{K}`$ の表現対象です。$`\cong`$ は自然同型のことで、以下の意味です。
$`\quad \exists \varphi : \cat{C}(\hyp, ?) \to F \In [\cat{C}^\op, {\bf Set}].\, \varphi \text{ は } [\cat{C}^\op, {\bf Set}] \text{ において同型射〈可逆射〉である}`$
この定義をアンパック(具体化/詳細化)すると:
$`\quad \exists \varphi : \cat{C}(\hyp, ?) \to F \In [\cat{C}^\op, {\bf Set}].\\
\qquad \forall X \in |\cat{C}|.\, (
\varphi_X : \cat{C}(\hyp, ?) \cong \mrm{K}(X) \In {\bf Set}
)`$
$`\mrm{K}(X) = {\bf 1}`$ なので、問題の命題は:
$`\quad \varphi_X : \cat{C}(X, ?) \cong {\bf 1} = \{0\} \In {\bf Set}`$
この命題が成立する対象 '$`?`$' は何か? 直感的に分かると思いますが、'$`?`$' は(あれば)圏 $`\cat{C}`$ の終対象です。終対象を $`1_{\cat{C}}`$ と書くことにすると、
$`\quad \varphi_X : \cat{C}(X, 1_\cat{C}) \cong {\bf 1} = \{0\} \In {\bf Set}`$
は確かに成立します。$`\varphi_X`$ は、単元集合のあいだの自明な同型写像です。
以上の普遍構成法の手順で構成した、あるいは特定した“興味深い”対象とは終対象でした。表現自然変換 $`\varphi`$ は、終対象への唯一の射を $`0`$(特定された単元集合の唯一の要素)に移す写像の族です。
以上のステップにより、我々は前層の表現系を構成したことになります。
- 圏: $`\cat{C}`$
- 前層: $`\mrm{K}: \cat{C}^\op \to {\bf Set}`$
- 表現対象: $`1_\cat{C} \in |\cat{C}|`$
- 表現自然変換: $`\varphi:: \cat{C}(\hyp, 1_\cat{C}) \twoto \mrm{K}`$
- 普遍元: $`0 \in {\bf 1}`$
普遍構成法とは、表現系を定義する行為であり、表現系は普遍構成法を実施する際の枠組みになります。
普遍構成法を(そうとは書いてなくても)実施している過去記事を挙げます。
- 関手の極限と表現可能関手の話題
10年以上前の記事ですが、極限が錐集合関手の表現対象であることを指摘しています。 - 圏論の極限を具体的に
すぐ上の記事の数年後に書いた記事で、錐集合関手の表現対象についてかなり詳しく書いています。 - 双線形写像集合関手の表現可能性とテンソル積の普遍性
最近(2023-06)の記事で、テンソル積ベクトル空間が、双線形写像集合関手の表現対象として得られることを示しています。ただし、双線形写像集合関手は共変関手なので、余前層の余表現(後述)になります。 - 表現可能関手と普遍元の例、ラムダ計算から
ラムダ計算に出現する指数型や評価射を、関手の表現の立場から見直しています。
双対的状況: 余前層の余表現系
前節の例では、前層(集合圏に値をとる反変関手)$`\mrm{K}`$ から終対象を定義しました。双対的な状況をセットアップすれば始対象を定義できます。
前層の表現系の双対的概念は余前層の余表現系です。双対的な状況/双対的な概念をもとの状況/概念と区別しないで論じることが多いのですが、これは混乱を招くでしょう。煩雑ではあるのですが、ここでは、接頭辞「余」を付けて双対的状況/双対的概念を区別することにします。
反変的状況と共変的状況を区別した用語の一覧は:
反変的状況 | 共変的状況 |
---|---|
前層 | 余前層〈copresheaf〉 |
表現系 | 余表現系〈corepresentation system〉 |
表現対象 | 余表現対象〈corepresenting object〉 |
表現自然変換 | 余表現自然変換〈corepresenting natural transformation〉 |
普遍元 | 余普遍元〈couniversal element〉 |
表現可能 | 余表現可能〈corepresentable〉 |
普遍構成 | 余普遍構成〈couniversal construction〉 |
余前層の余表現系の構成素(ラベルは同じ、等式も含める)のプロファイルを念のため書いておくと:
$`\quad \cat{C} \in |{\bf CAT}| \:\text{ locally small}\\
\quad F: \cat{C} \to {\bf Set} \In {\bf CAT}\\
\quad A : {\bf I} \to \cat{C} \In {\bf CAT}\\
\quad \varphi :: \cat{C}(A, \hyp) \twoto F : \cat{C} \to {\bf Set} \In {\bf CAT} \:\text{ invertible}\\
\quad a :: {\bf 1} \twoto F(A) : {\bf I} \to {\bf Set} \In {\bf CAT}\\
\quad \mrm{yoneda} ::: a = \varphi_A(\id_A) :: {\bf 1} \twoto F(A) : {\bf I} \to {\bf Set} \In {\bf CAT}
`$
例えば、錐集合関手(前層)の表現対象は極限でしたが、余錐集合関手(余前層)の余表現対象は余極限になります。
実際には、律儀に「余」を付けなくてもかまいませんが、反変的状況(前層ベース)と共変的状況(余前層ベース)を区別することは重要です。この両者を一緒くたにすることで分かりにくくなっている事があります。
アドホック随伴系の場合
「アドホック随伴系と自由対象・台対象」で述べたアドホック随伴系の場合を、余前層の余表現系の枠組み〈パターン | フレーム〉に当てはめてみましょう。
最初にセットアップする余前層は次のものです。
$`\For U: \cat{C} \to \cat{D} \In {\bf CAT}\\
\For A\in |\cat{C}|\\
\Subject H : \cat{D} \to {\bf Set}\\
\quad \For Y \in |\cat{D}|\\
\quad \Define H(X) := \cat{C}(A, U(Y)) \; \in |{\bf Set}|\\
\quad \For g:Y \to Z \In \cat{D}\\
\quad \Define H(g) := (\cat{C}(A, U(g)) : \cat{C}(A, U(Y)) \to \cat{C}(A, U(Z)) \In {\bf Set})
`$
圏 $`\cat{D}`$ 上の余前層 $`H`$ を手短に書くと:
$`\quad H := \cat{C}(A, U(\hyp))`$
余前層 $`H`$ が余表現可能であれば、余表現系を構成できます。そのためには次を満たす対象 $`W`$ (余表現対象)と自然変換 $`\varphi`$ (余表現自然変換)が必要です。
$`\quad W \in |\cat{D}|\\
\quad \varphi :: \cat{D}(W, \hyp) \twoto H : \cat{D} \to {\bf Set} \In {\bf CAT} \:\text{ invertible}
`$
余普遍元は余表現自然変換から米田写像*5で計算できますが、その計算式は:
$`\quad \varphi_W(\id_W) \;\in H(W) = \cat{C}(A, U(W))
`$
これは、アドホック随伴系のアドホック単位 $`\iota`$ の定義です。
アドホック随伴系は、次のような対応で余前層の余表現系の事例だとみなせます。
余表現系(一般) | アドホック随伴系(事例) |
---|---|
余前層 | 忘却関手と台対象から構成する関手 |
余表現対象 | 自由対象 |
余表現自然変換 | 転置 |
余普遍元 | アドホック単位 |
2023年8月時点で日本語Wikipedia「普遍性」の項目に載っている普遍射〈universal {morphism | arrow}〉と普遍性〈universal property〉は、アドホック随伴系の場合です*6。使っている名前(記号ラベルと呼び名)が違うので、対応を示します。特に、同じ文字 $`A`$ を違った意味で使っているので注意してください。理由や事情はありません。偶発的にそうなっているだけ。$`\newcommand{\Obj}[1]{|#1|}`$
$`\text{Wikipedia}`$ | $`\text{この記事}`$ |
---|---|
$`X\in \Obj{\cat{C}}`$ | $`A\in \Obj{\cat{C}}`$ |
$`A\in \Obj{\cat{D}}`$ | $`W \in \Obj{\cat{D}}`$ |
$`\phi: X \to U(A)`$ | $`\iota : A \to U(W)`$ |
Wikipedia項目では、「アドホック随伴系のアドホック単位 = 余表現系の余普遍元」である $`\phi`$ (またはペア $`(A, \phi)`$)を「普遍射」と呼んでいます。「普遍元」より「普遍射」のほうがよく使われている言葉かも知れません。Wikipediaに「普遍性」の明示的な定義はないのですが、アドホック随伴系/余表現系の言葉で言えば、「転置/余表現自然変換が自然同型であること」を指しているようです。
呼び名と言葉づかいの問題
「圏論の普遍性が難しい」という印象は、扱っている構造/系が難しいというよりは、関連する概念に対する呼び名と言葉づかいが錯綜していることが原因のような気がします。
例えば、「普遍元」という言葉を知ったのは最近、とある文書からなのですが、その文書の著者は universal object と universal element を混同していたかも知れません。しかし、「混同していた」と断言もできません。その著者のコミュニティでは、universal object と universal element を同義語として使っているかも知れないので。
普遍対象〈universal object〉の、おそらくは多数派の意味・用法は、前層の表現対象、または余前層の余表現対象のことです。この意味での典型的な普遍対象は、終対象と始対象ですが、圏の終対象または始対象を「普遍対象」と呼んでるケースもけっこうあります。これはトンチンカンなことではなくて、「関手の表現可能性と、要素の圏の終対象・始対象」で述べたように、前層/余前層の要素の圏を考えると、その圏の終対象/始対象は、前層/余前層の表現対象/余表現対象の情報を持っています。普遍対象は終対象または始対象として実現可能なことは事実なのです。
「普遍性」や「普遍対象」という言葉がややこしいのは、単なる名詞ではなくて、次の形の構文で言葉が使われることです。
- 主語 has 目的語 as-a 役割り
F, A, φ, a をそれぞれ表現系の前層、表現対象、表現自然変換、普遍要素として、上記構文の用法を示しておきます。これらの呼び名と言葉づかいは、双対の場合を区別しません。
主語 | has目的語 | 役割り |
---|---|---|
F | (A, φ) | 表現、表現ペア |
F | (A, a) | 表現、表現ペア |
F | A | 表現、表現対象 |
F | A | 普遍対象(おそらく多数派) |
F、(F, φ) | a | 普遍元、普遍射、普遍対象(誤用かも?) |
(F, A) | φ | 普遍性 |
A | (F, φ) | 普遍性 |
A | (F, a) | 普遍性 |
普遍性〈universality | universal property〉は、表現自然変換/余表現自然変換のことを指すか、自然変換に何か付けた複合概念を指すかです。これはモノを指す用法ですが、表現自然変換/余表現自然変換が可逆〈自然同型〉であるコトを指していることもあります(Wikipedia項目がそう)。
結局、「普遍性により」とか言われても何の意味だかサッパリ分からない事態になります。
前層の表現系/余前層の余表現系という構造/系と、その構造/系を枠組みとした普遍構成法/余普遍構成法の重要さは全く否定しませんが、「普遍性」や「普遍対象」という言葉は迂闊には使わないほうがいいんじゃないのかな、と思いますね。
*1:当該の構造/系は、とある2-指標に対する、ターゲット圏が2-圏 $`{\bf CAT}`$ であるモデルです。
*2:ストリング図内では、僕は自明圏として $`\unicode{x2606}`$ をよく使っています。
*3:趣味的とも言えますが、構造を指標で記述する場合や、ストリング図を描く場合は、単一のターゲット圏のなかに構造を配備するほうが扱いやすいです。
*4:僕の感覚では、関手が対象で表現されるのではなくて、対象が(米田埋め込みを通じて)関手により表現されるのだと思うのだけど ‥‥ まー、言ってもしょうがない。
*5:共変バージョンなので余米田写像と呼ぶほうがいいかも知れません。
*6:表現可能関手による定義も載ってますが、扱いは小さいです。