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参照用 記事

バエズ/ドーラン茂みの対称モノイド亜群

ここしばらく、半グラフを調べていたのですが、半グラフだけを考えていてもダメそうだ、と思いました。半グラフが描かれているキャンバスも一緒に考えないと辻褄が合わないようなのです。

半グラフを調べていた動機は、ワイヤリング図の下部構造になりそうだからです。ワイヤリング図は、キャンバスに描かれます。キャンバスは、種数 $`g`$ の閉曲面に $`n`$ 個の穴を穿った2次元コンパクト多様体です(「バエズ/ドーラン植物 // 曲面の穴ってなに?」参照)。キャンバスとそこに描かれたワイヤリング図を一緒にした幾何的対象物がバエズ/ドーラン植物です。

バエズ/ドーラン植物の直和を考えると、その全体は(適当な射の定義のもとに)対称モノイド亜群となります。このようにして作った対称モノイド亜群の対象をバエズ/ドーラン茂み〈Baez-Dolan grove〉と呼ぶことにします。色々な半グラフの圏/二重圏は、バエズ/ドーラン茂みの対称モノイド亜群と共に考えると良さそうです。$`\newcommand{\mrm}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}}
\newcommand{\In}{\text{ in } }
\newcommand{\bdry}{\partial }
%\newcommand{\Imp}{\Rightarrow }
%\newcommand{\Iff}{\Leftrightarrow }
\newcommand{\hyp}{\text{-} }
%\newcommand{\base}[1]{ {{#1}\!\lrcorner} }
`$

内容:

2次元までの多様体の圏

ここでの“多様体”は、連結とは限らない境界を許すコンパクトな可微分多様体です。1回微分できれば十分ですが、なめらか(何回でも微分できる)と仮定してもいいです。この記事内の多様体はこの条件を満たすものとして、そのような多様体の圏を単に $`{\bf Man}`$ と書きます。$`{\bf Man}`$ の射は、境界を境界に移す可微分写像です。

$`{\bf Man}^{\le 2}`$ を、2以下の次元の多様体だけを対象とした $`{\bf Man}`$ の充満部分圏とします。さらに、$`{\bf Man}^0, {\bf Man}^1, {\bf Man}^2`$ を、肩に乗った数を次元とする多様体達からなる充満部分圏とします。空多様体 $`\emptyset`$ は、どの次元にも所属すると考えます。空多様体の名目上の次元を明示したいときは、$`\emptyset^{(0)}, \emptyset^{(1)}, \emptyset^{(2)}`$ のように書きます。

$`{\bf Man}^k`$ ($`k = 0, 1, 2`$)は、直和をモノイド積として、$`\emptyset^{(k)}`$ を単位対象として対称モノイド圏になります。が一方、$`{\bf Man}^{\le 2}`$ は通常、モノイド圏とは考えません。直和を自由に許すと、球面と一点を並べた図形も作れますが、そのような図形は多様体とみなさないことが多いからです*1

多様体の境界をとる操作は、関手になります(射が境界を境界に移すので)。

$`\quad \bdry^2 : {\bf Man}^2 \to {\bf Man}^1 \In {\bf CAT}\\
\quad \bdry^1 : {\bf Man}^1 \to {\bf Man}^0 \In {\bf CAT}
`$

一般に、モノイド圏 $`\cat{C} = (\cat{C}, \otimes, I)`$ に対して、$`S \subseteq |\cat{C}|`$ が本質的モノイド生成系〈essential monoidal generator〉だとは次のことだとします。

  • 任意の $`\cat{C}`$ の対象は、$`S`$ の要素の有限個のモノイド積と同型になる。

直和をモノイド積としたモノイド圏 $`{\bf Man}^k`$ ($`k = 0, 1, 2`$)は、本質的モノイド生成系を持ちます。

  • $`{\bf Man}^0`$ では、一点空間だけの集合 $`\{\mrm{pt}\}`$ が本質的モノイド生成系となる。
  • $`{\bf Man}^1`$ では、円周と閉区間からなる集合 $`\{S^1, [0, 1]\}`$ が本質的モノイド生成系となる。
  • $`{\bf Man}^2`$ では、種数$`g`$の閉曲面に$`n`$個の穴を穿った図形 $`R^2(g, n)`$ *2達からなる集合 $`\{R^2(g, n) \mid g, n \in {\bf N} \}`$ が本質的モノイド生成系となる。

$`{\bf Man}^k`$ ($`k = 0, 1, 2`$)の対象の同型類を特徴づける量は次のようになります。

  • $`{\bf Man}^0`$ の対象の同型類は、点の個数 $`n`$ で決まる。
  • $`{\bf Man}^1`$ の対象の同型類は、円周の個数 $`n`$ と閉曲面の個数 $`m`$ で決まる。
  • $`{\bf Man}^2`$ の対象の同型類は、連結成分の個数 $`k`$ と、写像 $`\bar{k}\ni i \mapsto (g_i, n_i)`$ で決まる。ここで、$`\bar{k} = \{1, \cdots, k\}`$ 。

まとめると、次のように書けます。

  • $`(|{\bf Man}^0|/\!\cong) \cong {\bf N}`$
  • $`(|{\bf Man}^1|/\!\cong) \cong {\bf N}\times {\bf N}`$
  • $`(|{\bf Man}^2|/\!\cong) \cong \sum_{k\in {\bf N} }\mrm{Map}(\bar{k}, {\bf N}\times {\bf N})`$

$`X`$ の$`n`$個のコピーの直和を $`n\cdot X`$ と書くことにすると、各同型類の代表元は次のようにして得られます。

$`\quad {\bf N}\ni n \mapsto n\cdot \mrm{pt}\\
\quad {\bf N}\times {\bf N}\ni (n, m) \mapsto n\cdot S^1 + m\cdot [0, 1]\\
\quad \mrm{Map}(\bar{k}, {\bf N}\times {\bf N})\ni (g_i, n_i)_{i\in \bar{k}}
\mapsto \sum_{i \in \bar{k}} R^2(g_i, n_i)
`$

同型類の集合に入るモノイド構造も具合的に記述できます。

[補足]
次節で述べる幾何半グラフは1次元多様体とは限りません。しかし、1次元多様体に近い図形です。多様体とは限らないが、多様体に近い図形(多様体を素材に組み立てた図形)の圏を定義しておくのが良さそうです。多様体から組み立てた図形を「複体」と呼ぶこともありますが、「複体」があまりにも多用されるので(複体、複体、複体 … なんとかしてくれ!」参照)、「複体」は使いたくないなー。
[/補足]

幾何半グラフ

幾何半グラフについては、「半グラフのあいだのエタール射 // 幾何半グラフと組み合わせ半グラフ」に書いてますが、定義を少し変更します。変更の理由は、バエズ/ドーラン植物と半グラフを密接に結びつけるためです。バエズ/ドーラン植物(種数1の場合はバエズ/ドーラン・ツリー)については以下の過去記事に書いています。

半グラフのあいだのエタール射 // 幾何半グラフと組み合わせ半グラフ」の意味での幾何半グラフを $`X = (X_0, X_1)`$ とします。$`X_1 \setminus X_0`$ の連結成分達の集合を $`E(X)`$ とします。$`E(X)`$ は有限集合です。幾何半グラフに、組み合わせ構造の一部を含めましょう。接続写像〈incidence map〉$`\mrm{icd} = \mrm{icd}_X`$ は次の形の写像です。

$`\quad \mrm{icd}_X : E(X) \to \mrm{Pow}_{\le 2}(X_0) \In {\bf Set}`$

ここで、$`X_0`$ は単なる有限集合とみなしており、$`\mrm{Pow}_{\le 2}(X_0)`$ は基数2以下の部分集合の集合です。ここでの接続写像は、「開放ツリー: 半グラフ・ベースのツリー // 境界写像」における境界写像と同じです。「境界」という言葉や記号 $`\bdry`$ を使うと多様体の境界と混乱するので、用語「接続写像」、記号 $`\mrm{icd}`$ としました。

接続写像 $`\mrm{icd}`$ により、$`E(X)`$ の要素(連結成分)を分類できます。しかし、例外辺か例外ループかの判断は、$`\mrm{icd}`$ だけでは出来ません。

  • $`\mrm{icd}(e)`$ が二元集合のとき: $`e`$ は閉じた辺〈closed edge〉
  • $`\mrm{icd}(e)`$ が単元集合のとき: $`e`$ は開いた辺〈open edge〉
  • $`\mrm{icd}(e)`$ が空集合のとき: $`e`$ は例外辺〈exceptional edge〉か、または例外ループ〈exceptional loop〉。どちらかは分からない。

閉じた辺は、$`X_1`$ に埋め込まれたとき、位相的閉包として両端(一致するかも知れない)を持ちます。開いた辺は、$`X_1`$ に埋め込まれたとき、位相的閉包として片方だけ端点を持ちます。

[補足]
上記の定義は、今までの用語法をほぼ踏襲しています。が、仕切り直して次のように変更するほうが整合的になるでしょう。

  • 開いた辺 → 半開辺、半分開いた辺
  • 例外辺 → 全開辺、完全に開いた辺

例外辺と例外ループは、境界を持たないことでは共通していますが、あまり似てないようです。例外ループは内部辺の特殊なものとして扱えます(それほど例外的でもないです)が、例外辺は“辺”としてうまく扱えません。
[/補足]

開いた辺(半分開いた辺)と例外辺(完全に開いた辺)を持たない幾何半グラフは位相的にコンパクト〈compact〉になります。

幾何半グラフでワイヤリング図やバエズ/ドーラン植物を表現するためには、キャンバス境界円周〈canvas boundary circle〉を表す頂点とスポット〈spot〉を表す頂点の区別が必要です(「バエズ/ドーラン・ツリー: 色々な描画法」、「穴、スポット、エリア、シーム」参照)。頂点集合に、次のような直和分割を仮定します。

$`\quad X_0 = S + B`$

キャンバスは $`{\bf Man}^2`$ の対象で、その境界とは多様体の境界のことです。境界は、幾つかの円周 $`S^1`$ の直和 $`n\cdot S^1`$ と同型です。各境界円周を表す頂点の集合が $`B`$ です。次のように考えてもかまいません。

  • スポットを識別するラベルの集合が $`S`$ である。
  • 境界円周をを識別するラベルの集合が $`B`$ である。

上記の直和分割を(頂点集合の)スポット-境界・分割〈spot-boundary decomposition〉と呼ぶことにします。

スポット-境界・分割を持つ幾何半グラフ $`X = (X_0 = S + P, X_1)`$ に対して、内部辺〈internal edge〉、外部辺〈external edge〉、通過辺〈pass-through edge〉を定義します。この分類は、今までの内部辺・外部辺とは多少違うので注意してください。次の基準で判断します。

  • $`e\in E(X)`$ が閉じた辺(両端を持つ辺)で、両端ともにスポット頂点($`S`$ の要素)なら内部辺
  • $`e\in E(X)`$ が閉じた辺(両端を持つ辺)で、両端がスポット頂点と境界頂点($`B`$ の要素)なら外部辺
  • $`e\in E(X)`$ が閉じた辺(両端を持つ辺)で、両端がともに境界頂点なら通過辺
  • $`e\in E(X)`$ が例外ループなら内部辺
  • 開いた辺(半分開いた辺)と例外辺(完全に開いた辺)は、内部辺でも外部辺でも通過辺でもない。

幾何半グラフがコンパクトなら、すべての辺($`E(X)`$ の要素)を内部辺・外部辺・通過辺に分類できます。

バエズ/ドーラン植物

バエズ/ドーラン植物の亜群〈groupoid of Baez-Dolan plants〉を定義します。$`{\bf Man}^k`$ と同様に、次元 $`k = 0, 1, 2`$ に対して $`{\bf BDPlant}^k`$ を考えます。すべての次元のバエズ/ドーラン植物を寄せ集めた圏は今は考えません*3

$`{\bf BDPlant}^0`$ は、空多様体 $`\emptyset`$ から連結0次元多様体(1個の点)への写像を対象として、以下の図式を可換にする写像($`{\bf Man}^0`$ の射)を射とする圏です。

$`\require{AMScd}
\quad \begin{CD}
\emptyset @= \emptyset \\
@VVV @VVV\\
P=\{p\} @>f>> Q=\{q\}
\end{CD}\\
\text{commutative }\In {\bf Man}^0
`$

$`f`$ は必然的に同型で、$`{\bf BDPlant}^0`$ は、一点多様体達の圏と同一視可能です。

$`{\bf BDPlant}^1`$ は、有限個の点から $`S^1`$ または $`[0, 1]`$ と同型な多様体*4への単射写像を対象として、以下の図式を可換にする同型写像($`{\bf Man}^{\le 1}`$ の同型射)の組 $`(f, g)`$ を射とする圏です。

$`\quad \begin{CD}
A @>{f}>> B\\
@V{a}VV @VV{b}V\\
M @>g>> N
\end{CD}\\
\text{commutative }\In {\bf Man}^{\le 1}\\
\text{where }A, B\in |{\bf Man}^0|,\, M, N \in |{\bf Man}^1|
`$

有限個の点は、$`a, b`$ により境界(それがあれば)に移ることはありません

$`{\bf BDPlant}^2`$ では、(退化してない)ワイヤリング図が登場します。ワイヤリング図を描くキャンバスとして $`R^2(g, n)`$ を選び、ワイヤリング図の形状〈shape | figure〉(写像の域)はコンパクトなスポット-境界・分割を持つ幾何半グラフ $`X`$ だとします。ワイヤリング図〈wiring diagram〉は、写像 $`w: X \to R^2(g, n)`$ です。しかし、$`X`$ は $`{\bf Man}^{\le 2}`$ の対象ではないので、幾何半グラフから曲面への“写像”は別に定義する必要があります*5

幾何半グラフ $`X`$ の $`X_1 \setminus X_0`$ の開区間に両端を足して閉区間にしたものを $`W(X)`$ とします。$`X`$ はコンパクトなので、$`W(X)`$ の点に対応する点が $`X_1`$ 内にあります。自然な写像 $`W(X) \to X`$ が一意に決まります。$`W(X)`$ はコンパクトな1次元多様体なので、次の写像 $`w`$ は意味を持ちます。

$`\quad w : W(X) \to R^2(g, n) \In {\bf Man'}^{\le 2}`$

ここで、$`{\bf Man'}`$ は、射が境界を境界に移すという条件を外した多様体の圏です。一次元多様体 $`W(X)`$ の境界点の一部は、$`R^2(g, n)`$ の内部に移りますが、次のルールで統制します。

  • $`S \subseteq X_0`$ に対応する点は、$`R^2(g, n)`$ の内部(境界以外の部分)に移る。
  • $`B \subseteq X_0`$ に対応する点は、$`R^2(g, n)`$ の境界に移る。

$`w`$ に適切な条件を付けて、位相空間の圏 $`{\bf Top}`$ 内で、次の図式が可換になるような $`\widetilde{w}`$ が存在するようにします。

$`\quad\begin{CD}
W(X) @>{w}>> R^2(g, n) \\
@VVV @|\\
X_1 @>{\widetilde{w}}>> R^2(g, n)
\end{CD}\\
\text{commutative }\In {\bf Top}
`$

おおよそこのようにして定義した $`(w, \widetilde{w})`$ が、幾何半グラフ $`X`$ からキャンバス $`R^2(g, n)`$ への“写像”です。この“写像”が(修飾を持たない)2次元のバエズ/ドーラン植物〈2-d Baez-Dolan plant〉そのものです。ここでの「2次元」はキャンバスの次元です。2次元キャンバスに描かれた1次元図形がワイヤリング図です。

より詳しいことは以下の過去記事を参照してください。

$`X, X'`$ を2つの幾何半グラフとして、$`M, N`$ はどちらも $`R^2(g, n)`$ と(多様体として)同型な曲面とします。ワイヤリング図、すなわちバエズ/ドーラン植物 $`w, w'`$ のあいだの射は、以下の図式を可換にする、幾何半グラフのあいだの同型射 $`f`$ と曲面〈2次元多様体〉のあいだの同型射 $`g`$ の組 $`(f, g)`$ です。

$`\quad\begin{CD}
W(X) @>{f}>> W(X') \\
@V{w}VV @VV{w'}V\\
M @>{g}>> N
\end{CD}\\
\text{commutative }\In {\bf Man'}^{\le 2}
`$

以上で、3つの亜群 $`{\bf BDPlant}^0, {\bf BDPlant}^1, {\bf BDPlant}^2`$ が定義されました。

バエズ/ドーラン茂み

亜群 $`{\bf BDPlant}^0, {\bf BDPlant}^1`$ は、あまり面白くもないかも知れませんが、全体的・包括的に理解するために、0次元・1次元のバエズ/ドーラン植物も入れて考えます。空集合を(-1)次元の幾何半グラフと考えると、次のように言えます。

  1. 0次元のバエズ/ドーラン植物は、(-1)次元の幾何半グラフ(空集合)を、連結な0次元キャンバスに描いたもの。
  2. 1次元のバエズ/ドーラン植物は、0次元の幾何半グラフ(有限個の点)を、連結な1次元キャンバスに描いたもの。
  3. 2次元のバエズ/ドーラン植物は、1次元の幾何半グラフを、連結な2次元キャンバスに描いたもの。

どの次元であっても、バエズ/ドーラン植物は、幾何半グラフを $`X`$ 、連結多様体(コンパクトで境界はあるかも知れない)を $`M`$ として次の形に書けます。

$`\quad w: X_i \to M \In {\bf Top}`$

$`X_i`$ ($`i = -1, 0, 1`$)は、幾何半グラフ $`X`$ の台となる $`i`$次元空間((-1)次元空間は空集合)です。$`X`$ が多様体であるとは限らないので、位相空間の圏 $`{\bf Top}`$ で考えてますが、$`X_i`$ は($`i = 1`$でも)多様体に非常い近い空間です*6

幾何半グラフもキャンバス多様体も直和を作れるので、2つのバエズ/ドーラン植物の直和も作れます。

$`\text{For }u : V_i \to L \In {\bf Top}\\
\text{For } w: X_i \to M \In {\bf Top}\\
\quad (u + w): (V_i + X_i) \to (L + M) \In {\bf Top}
`$

直和を作ると、キャンバス空間は連結ではなくなるので、もはや植物とは言えません。バエズ/ドーラン植物の直和として作った構造をバエズ/ドーラン茂み〈Baez-Dolan grove〉と呼ぶことにします。

細かい構成やチェックは色々ありますが、バエズ/ドーラン茂みの全体はその同型射と共に、直和をモノイド積とする対称モノイド亜群を構成します。それを次のように書きます。

$`\quad {\bf BDGrove}^k = ({\bf BDGrove}^k, +, \emptyset^{(k)}) \:\:( k = 0, 1, 2)`$

生け垣、林、茂みの違い

半グラフに関わる諸概念 // 半グラフの生け垣と林」において、半グラフに対して生け垣〈hedge〉と〈forest〉を定義しましたが、生け垣・林は、モノイド積を持たない任意の圏 $`\cat{S}`$ に対して定義できます。その定義は以下のようでした。

$`\quad \cat{S}{\bf Hedge} := \mrm{Diag}^{{\bf FinTotOrdG}, \mrm{Disc}}(\cat{S})\\
\quad \cat{S}{\bf Forest} := \mrm{Diag}^{{\bf FinSetG}, \mrm{Disc}}(\cat{S})
`$

$`\mrm{Disc}`$ は、有限全順序集合の台集合または有限集合そのものを、離散圏とみなす関手です。

生け垣の圏、林の圏は、既存の圏 $`\cat{S}`$ から構成した新しい圏になります。それに対して茂み〈grove〉は、圏 $`{\bf BDGrove}^k`$ の対象のことです。どんなバエズ/ドーラン茂みも、バエズ/ドーラン植物の直和で書けることから、次の圏同値があります。($`\simeq`$ は圏同値を表すとします。)

$`\quad {\bf BDGrove}^k \simeq {\bf BDPlant}^k{\bf Forest} \In {\bf CAT}`$

一般に、圏 $`\cat{S}`$ がモノイド圏のとき、順序付き総積(「複グラフが定義するモノイド多項式関手」参照)を作る関手を定義できます。

$`\quad \vec{\prod} : \cat{S}{\bf Hedge} \to \cat{S} \In {\bf CAT}`$

圏 $`\cat{S}`$ が対称モノイド圏のとき、順序なし総積〈対称総積〉を作る関手を定義できます。

$`\quad \widetilde{\prod} : \cat{S}{\bf Forest} \to \cat{S} \In {\bf CAT}`$

順序なし総積の定義は意外に難しいですが、今はそれには触れません。

$`{\bf BDGrove}^k`$ に関しては、茂み($`{\bf BDGrove}^k`$ の対象)と生け垣・林(インデックス付きファミリー)は必要に応じて同一視できます。同一視が自明というわけでもありませんが。

*1:多様体とみなさないのはひとつの習慣であって、異なる次元の図形の和も認めたほうが都合がいいときもあります。

*2:surface の S から $`S^2`$ と書くと球面の意味になってしまいます。$`\Sigma`$ も他の意味で多用されます。で、S のひとつ前の文字 R をとりました。リーマン面にちなむ、と思ってもいいです。

*3:いずれは考えます。考える必要があります。

*4:$`S^1`$ または $`[0, 1]`$ と同型な多様体は、連結でコンパクトな境界を許す1次元多様体として特徴付けられます。

*5:このテの議論が鬱陶しいので、幾何半グラフ $`X`$ も曲面 $`R^2(g, n)`$ も含むような圏を定義したいのですが、それはまたいずれ。

*6:多様体に非常い近い空間の圏を定義すべきでしょうね、やはり。