2020-01-01から1年間の記事一覧
昨日の記事「確率グラフィカルモデルの背後にある圏は何か?」の課題にドンピシャで役立ちそうな論文を見つけました。 Title: Belief propagation in monoidal categories Author: Jason Morton Pages: 8p URL: https://arxiv.org/abs/1405.2618 短い論文で…
確率的不確定性を伴う状況の記述や分析の手法に確率グラフィカルモデル〈probabilistic graphical model〉があります。ベイズネットワーク〈Bayesian network〉が有名です。ベイズネットワークは有向グラフを使いますが、無向グラフを使うグラフィカルモデル…
多様体の話で接続係数というものが出てきます。「接続係数はなぜテンソルじゃないのですか?」と聞かれると困ってしまいます。なぜなら、接続係数はテンソルだからです。「接続係数はテンソルである」という事実を考慮すると、質問は次の形になります。 接続…
用語と記号のオーバーロード〈多義的使用〉はホントに悩みのタネです。混乱と誤解を避けるためにオーバーロードはやめようと思うことは多いのですが、あまり律儀にオーバーロード解決すると用語と記号のインフレーション〈急激な増加〉を引き起こして現実的…
今年の8月に「基底とフレーム、丸く収まる妥協案」という記事を書きました。その記事で、混同されがちな3つの概念を区別して、それぞれに別な名前を与えました。「うまくいった」と思ったのですが、まだ問題がありました。内容: 定義が狭すぎた 準備 再定義…
「ベイズ確率論、ジェイコブス達の新しい風」で紹介したチャンネル方式〈the channel perspective, the channel approach〉では、状態(確率測度の別名、確率分布でも同義)と述語〈ファジー述語〉を双対的に扱います。述語はもちろん状態ではありません。ジ…
昨日の「拡張スタイルのジリィモナド」にて: 随伴公式は積分のフビニの定理です。ただし、マルコフ核が絡むと、単純なフビニの定理と少し違った形になります。単純なテンソル積測度ではなくて、依存テンソル積とでも呼ぶべき構成が必要です。が、この話題は…
「絵算で見る、拡張スタイルのモナドとモノイド・スタイルのモナド」にて: 拡張スタイルは ...[snip]... モナド法則の証明がモノイド・スタイルより容易になる場合があります。 このことの実例として、ジリィモナドを拡張スタイルで記述してみましょう。モ…
「Haskellの二重コロン「::」とバインド記号「>>=」の説明」で、拡張スタイルのモナドとモノイド・スタイルのモナドの話題が出ました。この話題はだいぶ昔に書いたことがありますが、絵算の応用として「拡張スタイル ←→ モノイド・スタイル」の相互変換をし…
圏論はある程度知っているけど、Haskellの記号との対応がよく分からない人のための説明です。内容: 二重コロン バインド記号 適用と結合 二重コロンHaskell風構文で f::A -> B と書かれていたら、二重コロンは単一コロンにして f:A → B と解釈すればいい --…
エラーやバグの報告で、画面ショットを添付することがあります。GUIアプリケーションではそれが当然でしょうし、画面ショットを付けてくれないと困ることも多いでしょう。ですが、コンソールに出力されたテキストメッセージの画面ショットを何枚かとって、そ…
長めのCha話会の記録用メモ(1トピックのみ)。内容: アフィン空間の圏 群の主等質空間 測定の分類 アフィン空間の圏圏の定義と、著名な幾つかの圏(例えば↓)については知っているものとします。 Set(集合と写像の圏) Ord(順序集合と単調写像の圏) Vec…
圏論の基本的な記法に、dom, cod, id があります。f dom(f), f cod(f), A idA、idだけ引数〈argument〉が下付きで入るんですよね。id(A)としなかったのは、id(A)が関数のとき、関数の引数を渡すと id(A)(x) となるからでしょう。丸括弧で囲まれた引数が続く…
多相関数の話はもうしません(一段落ついた)。ですが、「多相関数と型クラス // 指標:いつもの事例で」で、指標の例を出したので、指標の話を続けようかな。高次圏論を考慮して指標の構文を決めるとどうなるか、という話です。内容: 指標:いつもとチョッ…
ある種のツリーデータ型はモナドにできます。[追記]この記事は十何年か前に書いておくべきだったのかも知れません。当時は、ツリーデータ型のモナドは自明な事実に見えてました(ツリーばっかりいじっていたからなー)。が、「えっ、そうだったの」と思う人…
面白い偶然が起きることがあります。ごく最近、次の記事を書きました。 2020年9月7日 蒸し返し: アドホック多相 vs パラメトリック多相 2020年9月8日 多相関数の「パラメトリック性 vs 満足性」 そして9月8日と9月9日(昨日)、4年前の記事にkhibinoさんか…
「アドホック多相」「パラメトリック多相」という言葉は、ハッキリとした定義がないままに使われることが多いようです。その実情を追認、あるいは実情に迎合して「どうせ定義がイイカゲンなんだから、イイカゲンに使えばいいよね」と述べたのが「「アドホッ…
一年ほど前に「「アドホック多相 vs パラメトリック多相」をマジメに考えてはいけない」という記事を書きました。多相性を二種類に分類できるわけではなくて、パラメトリック性(あるいはアドホック性)はしょせん程度問題だ、という話です。「関数定義がひ…
「人が男か女か」は容易に決定できると、なんとなく思っていますが、事情はそう簡単ではないですね。架空の人物Aさんを考えましょう。Aさんは男として生まれ男として育ったとします。いわゆる“性転換手術”を受けて女性として性風俗店で働き、現役引退して経…
数を一方向に並べたタプル(数ベクトルともいう)と、数を二方向に並べた行列に対する計算手法が行列計算です。行列計算はスンバラシイと思います。どこがスンバラシイかというと; タプルや行列は、ベクトルや線形写像の表現になっていますが、そのことを知…
比較的最近、Emacs → VSCode と移行しました。「Emacsとお別れして、僕は辛い」に書いたように辛いこともあります。「…辛い」記事に次のように書きました。 現状では、「diredバッファ1枚 = VSCodeインスタンス1個」と考えて、ディレクトリごとにVSCodeのイ…
随伴系〈adjunction〉を理解するのはなかなか難しいようです。なぜ難しい? -- いやむしろ、なぜ難しいと感じる? のでしょう。内容: ペアは台に過ぎない 役割の名称 ペア(だけ)じゃないから ペアは台に過ぎない随伴系という言葉を使いましたが、単に随伴…
以下の4つの記事で、パランパランと述べたことの背景というか気持ちを付け足しておきます。 ベクトル空間の基底とフレームは違う 基底変換、なにそれ? 基底とフレーム、丸く収まる妥協案 「ベクトル」の3つの解釈:要素、ポインター、線形ポインター 自由忘…
「基底とフレーム、丸く収まる妥協案」の続きです。VはR上のベクトル空間で dim(V) = m とします。写像 φ:{1, ..., m} → V を最初に考えて、写像φの像 Im(φ) はVの部分集合になり、写像φの線形拡張 φ∧:Rm → V は線形写像です。次の状況を考えます。 φ∧:Rm → …
一昨日の記事: ベクトル空間の基底とフレームは違う 昨日の記事: 基底変換、なにそれ? 世間一般では、「基底」「フレーム」が何を意味するかは曖昧だけど、まーしょうがないよね、という話をしました。僕は区別したいけど、習慣は変わりませんからね。で…
某所で「『基底変換』という言葉は曖昧語だから、意味を確認してから使ってね」と言ったのですが、どのくらい曖昧かを述べます。そもそも、基底の話じゃなくてフレームの話なので「フレーム変換」です。フレームのことも基底と呼ぶ習慣は一般的なのでしょう…
「ウワーッ、間違えた!」という事態が今日発生しました。何を間違えたかと言うと、ベクトル空間の基底とフレームを混同してました。基底とフレームは、世間の皆さんも混同してますよね(たぶん)。フレームのことも基底と呼ぶ(意図的混同、あるいはオーバ…
圏論で使う絵算〈{graphical | pictorial | diagrammatic} {calculation | computation}〉については、次の記事で詳しく説明しています。 圏論の随伴をちゃんと抑えよう: お絵描き完全解説 上記過去記事にしたがって多少のトレーニングをすれば圏論的絵図の…
過去の記事「マルコフ圏におけるベイズの反転定理」の最後で次のように言いました。 「ベイズ反転は、ほんとの逆射ではないから inversion と呼ぶのは不適切」という意見はもっともですが、適当なセッティングのもとでは、ベイズ反転を逆射と考えることが出…
昨日書いた記事「確率的圏における期待値と雑音」で、記法の選び方をしくじりました。 圏M上のジリィモナドを'G'と書くことにした。 Gのクライスリ圏Sの射をラテン文字大文字で書くことにした。 Sの射を、'F', 'G' と書いた。 文字'G'の使用が衝突した。 絵…