2020-01-01から1年間の記事一覧
確率的圏〈stochastic category | 確率圏〉の暫定的定義については「確率的圏、存在命題とスコーレム・コンビネータ // 確率的圏」で述べました。確率的圏は、事実上ジリィモナドのクライスリ圏です。こう定義してみても、期待値の概念は現れません。期待値…
テキストエディタをEmacsからVSCodeに切り替えました。僕は、EmacsマニアでもなければEmacs LOVEでもない、単に長期間普通に使ってきたユーザーです。なので、Emacsを捨てることに心情的な抵抗はないです。が、長い期間で身体に染み付いたEmacs脊髄反射はな…
以前に書いた記事「圏論的確率論におけるCタイプとAタイプ」と、昨日書いた記事「マルコフ圏におけるベイズの反転定理」に対する補足を書きます。内容: 確率的圏 確率的圏の事例 存在命題 スコーレム・コンビネータ 確率的圏確率的圏〈stochastic category…
ベイズの定理とかベイズの公式が何を指すかはいまいちハッキリしませんが、「マルコフ圏、ベイズの定理、陰関数定理」の最初の節で引用した定理のことだと言って間違いにはならないでしょう。フリッツ〈Tobias Fritz〉の"A synthetic approach to Markov ker…
「文書処理:20年前の課題は今でも課題」より: 上記の問題群をすべて詳細に解説することは、僕に残されたエネルギー量ではとても無理です。幾つかを選んで、おおよその状況を語ろうかと思います。とりあえずは、今後の(散発的な)ブログ記事で3回くらいを…
昨日書いた記事「対称モノイド多圏(簡約版)」に関連しての雑多なお話。過去の記事で何度か触れたように、多圏〈polycategory〉は難しくて閉口します。そんな難しい多圏を何で必要とするのか? というと、僕の主たる動機は“シーケント計算のモデル”としてで…
単なる圏ではなくて多圏〈polycategory〉という概念が必要になることがけっこうあります。例えば、シーケント計算、テンソル計算、データベース理論などの圏論的定式化には多圏が欲しいところです。しかし、多圏をちゃんと定義するのはなかなかに難しい。そ…
僕は、人生のかなりの時間と労力と情熱を文書処理に費やしました。なので、文書処理のことを書いたり話したりしたことはあります。ですが、文書処理の実際のプロジェクトやソフトウェアの話をしたことはありません。守秘義務の問題もありますし、仮に守秘義…
「Google日本語入力のコマンドと状態遷移を解明する」にて: 色々と事情がありまして、Google日本語入力のキーバインドを変更しようと思いました。...[snip]... その事情は別なブログ記事に書くかも知れません。 ...[snip]... 今まで[変換キーを]トグル方式…
表題の「こんな書き方」とは:「積分には不定積分と定積分があります」は認めるとして、積分区間(上端と下端)が書いてないので、左辺が関数の形をしているので、上記の積分記号は不定積分を表すことになります。不定積分の意味は、おおよそ「微分の逆」で…
色々と事情がありまして*1、Google日本語入力のキーバインドを変更しようと思いました。付属ツール〈Google日本語入力のプロパティ〉のGUIからも変更できますが、テキストエディタを使ったほうが楽なので、タブ区切り形式のテキストファイルとしてキー設定を…
AutoHotKeyは、ユーザーがホットキー(OSやバックグラウンドプロセスが処理する特殊なキーコンビネーション)を自由に設定できるWindowsソフトウェアです。スクリプト言語としても使用できます。が、スクリプト言語としての使用はおすすめはできません。ホッ…
マルコフ圏の一族(昨日の記事「マルコフ圏の一族」参照)から、典型例となる圏をいくつかピックアップしましょう。まずは、確率論で使うマルコフ圏を3つ。 SBorelStoc : 標準ボレル空間〈standard Borel space〉を対象として、マルコフ核を射とするマルコ…
ひと月ほど前(6月初旬)にマルコフ圏を知って以来、いくつかのブログエントリーを書きました。 マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化 マルコフ圏って、いいんじゃないのコレ マルコフ圏、ベイズの定理、陰関数定理 圏論的確率論におけるC…
確率統計の理解のために、僕がジリィモナド、マルコフ核、マルコフ圏などをおすすめするのは、見通しがよくなり、必要な概念が実は少数なことが分かるからです。少数の概念に対する膨大な呼び名(同義語、類義語、曖昧語)が無節操にとっ散らかっています。…
扱う対象が、より一般的で複雑になっていきます。*1 対象 圏 備考 ベクトル空間 K-Vect Kは体 ベクトルバンドル K-VectBdl[X] Kは体、Xは底空間 加群 R-Mod Rは可換環 加群層 Φ-Mod-Sh[X] Xは空間、Φは空間X上の可換環層 *1:Graphvizのソース:https://bit.l…
多ベクトル空間〈poly-vector space〉と多線形写像〈poly-linear map〉の圏PLを作りましょう。テンソル計算をモダンにやりたいとき、PLが必要になります。また、PLを作る過程で、ちょっと変わったモナドが現れます。内容: 圏CMLの定義 CML上の線形化モナド…
f:X×Y→Z という関数〈写像〉をストリング図で表すと、次のようになります。描画方向は上から下で、関数のノードは四角です。*1とあるコミュニティーでは、次のような図を因子グラフ〈factor graph〉と呼ぶようです。ストリング図と同様、描画方向を前もって…
「マルコフ核: 確率計算のモダンな体系」にて: 積分記号 と“微分”記号 を使って書いてますが、離散の場合でも通用する話なので、離散の場合は和分記号〈総和記号〉 と“差分”記号 または に書き換えてください。 これを実行するときの注意を幾つか述べてお…
「マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化」にて: 比較的最近、フリッツ〈Tobias Fritz〉は、確率と統計を圏論的かつ統合的〈synthetic〉に扱うための枠組みとして、マルコフ圏〈Markov category〉を提案しています。...[sinp]...統合的〈s…
この記事は、5年前(2015-06-04)に書いた次の記事を再整理・敷衍したものです。もとの過去記事を参照する必要はありません*1。 測度的積分核と随伴構造 まず、「マルコフ核」の同義語が山のように(少なくとも20個は)あることは、次の記事を参照: ベイズ確…
あっ、そうか! そういうことか。昨日・一昨日と、フォングの因果セオリー論〈theory of causal theories〉を紹介しました。フォング論文で使われている語法・記法・図法が混乱・誤解をまねく〈confusing / misleading〉ものなので、「どうなの? コレ」と疑…
因果セオリー論〈theory of causal theories〉という奇妙な言葉については直前の記事「フォングの“因果セオリー”の理論」を見てください。直前の記事において、フォングのストリング図は「視認性が悪く、おすすめできませんね。」と否定的な言い方をしたので…
次の論文は、2012年に書かれたフォング〈Brendan Fong〉の修士論文です*1。 Title: Causal Theories: A Categorical Perspective on Bayesian Networks Author: Brendan Fong Pages: 77p URL: https://arxiv.org/abs/1301.6201 *2 タイトルが「因果の理論」…
一週間ほど前に、「経験分布」という言葉を聞いたのですが、これがよく分からない。経験分布は標本に対して定義されるらしいのですが、「標本」と「分布」といえば、“意味不明な用語の四天王”のなかの二つじゃないですか。こりゃ意味不明になるわな。 超曖昧…
マルコフ圏に出会って10日くらいですが、だいぶ気に入ってます。 5月9日 マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化 5月16日 マルコフ圏って、いいんじゃないのコレ フリッツ〈Tobias Fritz〉がマルコフ圏という俯瞰図を与えてくれたおかげで、…
「マルコフ圏 A First Look -- 圏論的確率論の最良の定式化」で紹介したマルコフ圏は、比較的に新しい概念です。 フリッツ〈Tobias Fritz〉が公理化して、新しい名前を付けた。 アイディアは新しくはなく、過去に同様な試みがあり、大量の実例もある。 フリ…
新型コロナウィルス禍は、誰にとっても酷い厄災なのですが、そのなかでポジティブな変化を探すなら、オンライン・ナントカが一般化したことでしょう。「オンラインではどうにもならない」ことも多いですが、「オンラインでもなんとかなるな」と発見した人も…
※ 追記あります。ジョニー(a.k.a. id:hiroki_f @hiroki_f)*1が、twitterで「埋め込まれた多様体の向き」のことをつぶやいていたのですが、最初、意味がよく分かりませんでした(ツイートなので致し方ない)。2,3度やり取りして、だいたい納得しました。ま…
比較的最近、フリッツ〈Tobias Fritz〉は、確率と統計を圏論的かつ統合的〈synthetic〉*1に扱うための枠組みとして、マルコフ圏〈Markov category〉を提案しています。僕が知る限り、次の論文がマルコフ圏に関するいちばん詳しい資料です。 Title: A synthet…